我が輩はポンである。 カジポンは墓マイラーで偉人愛が凄い!ジョジョ立ちの生みの親?

#8 Pure bitter

我が輩はポンである

吾輩 ( わがはい )は猫である。 名前はまだ無い。 どこで生れたかとんと 見当 ( けんとう )がつかぬ。 何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。 吾輩はここで始めて人間というものを見た。 しかもあとで聞くとそれは書生という人間中で一番 獰悪 ( どうあく )な種族であったそうだ。 この書生というのは時々我々を 捕 ( つかま )えて 煮 ( に )て食うという話である。 しかしその当時は何という考もなかったから別段恐しいとも思わなかった。 ただ彼の 掌 ( てのひら )に載せられてスーと持ち上げられた時何だかフワフワした感じがあったばかりである。 掌の上で少し落ちついて書生の顔を見たのがいわゆる人間というものの 見始 ( みはじめ )であろう。 この時妙なものだと思った感じが今でも残っている。 第一毛をもって装飾されべきはずの顔がつるつるしてまるで 薬缶 ( やかん )だ。 その 後 ( ご )猫にもだいぶ 逢 ( あ )ったがこんな 片輪 ( かたわ )には一度も 出会 ( でく )わした事がない。 のみならず顔の真中があまりに突起している。 そうしてその穴の中から時々ぷうぷうと 煙 ( けむり )を吹く。 どうも 咽 ( む )せぽくて実に弱った。 これが人間の飲む 煙草 ( たばこ )というものである事はようやくこの頃知った。 この書生の掌の 裏 ( うち )でしばらくはよい心持に坐っておったが、しばらくすると非常な速力で運転し始めた。 書生が動くのか自分だけが動くのか分らないが 無暗 ( むやみ )に眼が廻る。 胸が悪くなる。 到底 ( とうてい )助からないと思っていると、どさりと音がして眼から火が出た。 それまでは記憶しているがあとは何の事やらいくら考え出そうとしても分らない。 ふと気が付いて見ると書生はいない。 たくさんおった兄弟が一 疋 ( ぴき )も見えぬ。 肝心 ( かんじん )の母親さえ姿を隠してしまった。 その上 今 ( いま )までの所とは違って 無暗 ( むやみ )に明るい。 眼を明いていられぬくらいだ。 はてな何でも 容子 ( ようす )がおかしいと、のそのそ 這 ( は )い出して見ると非常に痛い。 吾輩は 藁 ( わら )の上から急に笹原の中へ棄てられたのである。 ようやくの思いで笹原を這い出すと向うに大きな池がある。 吾輩は池の前に坐ってどうしたらよかろうと考えて見た。 別にこれという 分別 ( ふんべつ )も出ない。 しばらくして泣いたら書生がまた迎に来てくれるかと考え付いた。 ニャー、ニャーと試みにやって見たが誰も来ない。 そのうち池の上をさらさらと風が渡って日が暮れかかる。 腹が非常に減って来た。 泣きたくても声が出ない。 仕方がない、何でもよいから 食物 ( くいもの )のある所まであるこうと決心をしてそろりそろりと池を 左 ( ひだ )りに廻り始めた。 どうも非常に苦しい。 そこを我慢して無理やりに 這 ( は )って行くとようやくの事で何となく人間臭い所へ出た。 ここへ 這入 ( はい )ったら、どうにかなると思って竹垣の 崩 ( くず )れた穴から、とある邸内にもぐり込んだ。 縁は不思議なもので、もしこの竹垣が破れていなかったなら、吾輩はついに 路傍 ( ろぼう )に 餓死 ( がし )したかも知れんのである。 一樹の蔭とはよく 云 ( い )ったものだ。 この垣根の穴は 今日 ( こんにち )に至るまで吾輩が 隣家 ( となり )の三毛を訪問する時の通路になっている。 さて 邸 ( やしき )へは忍び込んだもののこれから先どうして 善 ( い )いか分らない。 そのうちに暗くなる、腹は減る、寒さは寒し、雨が降って来るという始末でもう一刻の 猶予 ( ゆうよ )が出来なくなった。 仕方がないからとにかく明るくて暖かそうな方へ方へとあるいて行く。 今から考えるとその時はすでに家の内に這入っておったのだ。 ここで吾輩は 彼 ( か )の書生以外の人間を再び見るべき機会に 遭遇 ( そうぐう )したのである。 第一に逢ったのがおさんである。 これは前の書生より一層乱暴な方で吾輩を見るや否やいきなり 頸筋 ( くびすじ )をつかんで表へ 抛 ( ほう )り出した。 いやこれは駄目だと思ったから眼をねぶって運を天に任せていた。 しかしひもじいのと寒いのにはどうしても我慢が出来ん。 吾輩は再びおさんの 隙 ( すき )を見て台所へ 這 ( は )い 上 ( あが )った。 すると間もなくまた投げ出された。 吾輩は投げ出されては這い上り、這い上っては投げ出され、何でも同じ事を四五遍繰り返したのを記憶している。 その時におさんと云う者はつくづくいやになった。 この間おさんの 三馬 ( さんま )を 偸 ( ぬす )んでこの返報をしてやってから、やっと胸の 痞 ( つかえ )が下りた。 吾輩が最後につまみ出されようとしたときに、この 家 ( うち )の主人が騒々しい何だといいながら出て来た。 下女は吾輩をぶら下げて主人の方へ向けてこの 宿 ( やど )なしの小猫がいくら出しても出しても 御台所 ( おだいどころ )へ 上 ( あが )って来て困りますという。 主人は鼻の下の黒い毛を 撚 ( ひね )りながら吾輩の顔をしばらく 眺 ( なが )めておったが、やがてそんなら内へ置いてやれといったまま奥へ 這入 ( はい )ってしまった。 主人はあまり口を聞かぬ人と見えた。 下女は 口惜 ( くや )しそうに吾輩を台所へ 抛 ( ほう )り出した。 かくして吾輩はついにこの 家 ( うち )を自分の 住家 ( すみか )と 極 ( き )める事にしたのである。 吾輩の主人は 滅多 ( めった )に吾輩と顔を合せる事がない。 職業は教師だそうだ。 学校から帰ると終日書斎に這入ったぎりほとんど出て来る事がない。 家のものは大変な勉強家だと思っている。 当人も勉強家であるかのごとく見せている。 しかし実際はうちのものがいうような勤勉家ではない。 吾輩は時々忍び足に彼の書斎を 覗 ( のぞ )いて見るが、彼はよく 昼寝 ( ひるね )をしている事がある。 時々読みかけてある本の上に 涎 ( よだれ )をたらしている。 彼は胃弱で皮膚の色が 淡黄色 ( たんこうしょく )を帯びて弾力のない 不活溌 ( ふかっぱつ )な徴候をあらわしている。 その癖に大飯を食う。 大飯を食った 後 ( あと )でタカジヤスターゼを飲む。 飲んだ後で書物をひろげる。 二三ページ読むと眠くなる。 涎を本の上へ垂らす。 これが彼の毎夜繰り返す日課である。 吾輩は猫ながら時々考える事がある。 教師というものは実に 楽 ( らく )なものだ。 人間と生れたら教師となるに限る。 こんなに寝ていて勤まるものなら猫にでも出来ぬ事はないと。 それでも主人に云わせると教師ほどつらいものはないそうで彼は友達が来る 度 ( たび )に何とかかんとか不平を鳴らしている。 吾輩がこの家へ住み込んだ当時は、主人以外のものにははなはだ不人望であった。 どこへ行っても 跳 ( は )ね付けられて相手にしてくれ手がなかった。 いかに珍重されなかったかは、 今日 ( こんにち )に至るまで名前さえつけてくれないのでも分る。 吾輩は仕方がないから、出来得る限り吾輩を入れてくれた主人の 傍 ( そば )にいる事をつとめた。 朝主人が新聞を読むときは必ず彼の 膝 ( ひざ )の上に乗る。 彼が昼寝をするときは必ずその 背中 ( せなか )に乗る。 これはあながち主人が好きという訳ではないが別に構い手がなかったからやむを得んのである。 その後いろいろ経験の上、朝は 飯櫃 ( めしびつ )の上、夜は 炬燵 ( こたつ )の上、天気のよい昼は 椽側 ( えんがわ )へ寝る事とした。 しかし一番心持の好いのは 夜 ( よ )に 入 ( い )ってここのうちの小供の寝床へもぐり込んでいっしょにねる事である。 この小供というのは五つと三つで夜になると二人が一つ床へ 入 ( はい )って 一間 ( ひとま )へ寝る。 吾輩はいつでも彼等の中間に 己 ( おの )れを 容 ( い )るべき余地を 見出 ( みいだ )してどうにか、こうにか割り込むのであるが、運悪く小供の一人が眼を 醒 ( さ )ますが最後大変な事になる。 すると例の神経胃弱性の主人は 必 ( かなら )ず眼をさまして次の部屋から飛び出してくる。 現にせんだってなどは 物指 ( ものさし )で尻ぺたをひどく 叩 ( たた )かれた。 吾輩は人間と同居して彼等を観察すればするほど、彼等は 我儘 ( わがまま )なものだと断言せざるを得ないようになった。 ことに吾輩が時々 同衾 ( どうきん )する小供のごときに至っては 言語同断 ( ごんごどうだん )である。 自分の勝手な時は人を逆さにしたり、頭へ袋をかぶせたり、 抛 ( ほう )り出したり、 へっついの中へ押し込んだりする。 しかも吾輩の方で少しでも手出しをしようものなら 家内 ( かない )総がかりで追い廻して迫害を加える。 この間もちょっと畳で爪を 磨 ( と )いだら細君が非常に 怒 ( おこ )ってそれから容易に座敷へ 入 ( い )れない。 台所の板の間で 他 ( ひと )が 顫 ( ふる )えていても 一向 ( いっこう )平気なものである。 吾輩の尊敬する 筋向 ( すじむこう )の白君などは 逢 ( あ )う 度毎 ( たびごと )に人間ほど不人情なものはないと言っておらるる。 白君は先日玉のような子猫を四疋 産 ( う )まれたのである。 ところがそこの 家 ( うち )の書生が三日目にそいつを裏の池へ持って行って四疋ながら棄てて来たそうだ。 白君は涙を流してその一部始終を話した上、どうしても我等 猫族 ( ねこぞく )が親子の愛を 完 ( まった )くして美しい家族的生活をするには人間と戦ってこれを 剿滅 ( そうめつ )せねばならぬといわれた。 一々もっともの議論と思う。 また隣りの 三毛 ( みけ )君などは人間が所有権という事を解していないといって 大 ( おおい )に憤慨している。 元来我々同族間では 目刺 ( めざし )の頭でも 鰡 ( ぼら )の 臍 ( へそ )でも一番先に見付けたものがこれを食う権利があるものとなっている。 もし相手がこの規約を守らなければ腕力に訴えて 善 ( よ )いくらいのものだ。 しかるに彼等人間は 毫 ( ごう )もこの観念がないと見えて我等が見付けた御馳走は必ず彼等のために 掠奪 ( りゃくだつ )せらるるのである。 彼等はその強力を頼んで正当に吾人が食い得べきものを 奪 ( うば )ってすましている。 白君は軍人の家におり三毛君は代言の主人を持っている。 吾輩は教師の家に住んでいるだけ、こんな事に関すると両君よりもむしろ楽天である。 ただその日その日がどうにかこうにか送られればよい。 いくら人間だって、そういつまでも栄える事もあるまい。 まあ気を永く猫の時節を待つがよかろう。 我儘 ( わがまま )で思い出したからちょっと吾輩の家の主人がこの我儘で失敗した話をしよう。 元来この主人は何といって人に 勝 ( すぐ )れて出来る事もないが、何にでもよく手を出したがる。 俳句をやって ほととぎすへ投書をしたり、新体詩を 明星へ出したり、間違いだらけの英文をかいたり、時によると弓に 凝 ( こ )ったり、 謡 ( うたい )を習ったり、またあるときはヴァイオリンなどをブーブー鳴らしたりするが、気の毒な事には、どれもこれも物になっておらん。 その癖やり出すと胃弱の癖にいやに熱心だ。 後架 ( こうか )の中で謡をうたって、近所で 後架先生 ( こうかせんせい )と 渾名 ( あだな )をつけられているにも関せず 一向 ( いっこう )平気なもので、やはりこれは 平 ( たいら )の 宗盛 ( むねもり )にて 候 ( そうろう )を繰返している。 みんながそら宗盛だと吹き出すくらいである。 この主人がどういう考になったものか吾輩の住み込んでから一月ばかり 後 ( のち )のある月の月給日に、大きな包みを 提 ( さ )げてあわただしく帰って来た。 何を買って来たのかと思うと水彩絵具と毛筆とワットマンという紙で今日から謡や俳句をやめて絵をかく決心と見えた。 果して翌日から当分の間というものは毎日毎日書斎で昼寝もしないで絵ばかりかいている。 しかしそのかき上げたものを見ると何をかいたものやら誰にも鑑定がつかない。 当人もあまり 甘 ( うま )くないと思ったものか、ある日その友人で美学とかをやっている人が来た時に 下 ( しも )のような話をしているのを聞いた。 「どうも 甘 ( うま )くかけないものだね。 人のを見ると何でもないようだが 自 ( みずか )ら筆をとって見ると 今更 ( いまさら )のようにむずかしく感ずる」これは主人の 述懐 ( じゅっかい )である。 なるほど 詐 ( いつわ )りのない処だ。 彼の友は金縁の 眼鏡越 ( めがねごし )に主人の顔を見ながら、「そう初めから上手にはかけないさ、第一室内の想像ばかりで 画 ( え )がかける訳のものではない。 昔 ( むか )し 以太利 ( イタリー )の大家アンドレア・デル・サルトが言った事がある。 画をかくなら何でも自然その物を写せ。 天に 星辰 ( せいしん )あり。 地に 露華 ( ろか )あり。 飛ぶに 禽 ( とり )あり。 走るに 獣 ( けもの )あり。 池に金魚あり。 枯木 ( こぼく )に 寒鴉 ( かんあ )あり。 自然はこれ一幅の 大活画 ( だいかつが )なりと。 どうだ君も画らしい画をかこうと思うならちと写生をしたら」 「へえアンドレア・デル・サルトがそんな事をいった事があるかい。 ちっとも知らなかった。 なるほどこりゃもっともだ。 実にその通りだ」と主人は 無暗 ( むやみ )に感心している。 金縁の裏には 嘲 ( あざ )けるような 笑 ( わらい )が見えた。 その翌日吾輩は例のごとく 椽側 ( えんがわ )に出て心持善く 昼寝 ( ひるね )をしていたら、主人が例になく書斎から出て来て吾輩の 後 ( うし )ろで何かしきりにやっている。 ふと眼が 覚 ( さ )めて何をしているかと 一分 ( いちぶ )ばかり細目に眼をあけて見ると、彼は余念もなくアンドレア・デル・サルトを 極 ( き )め込んでいる。 吾輩はこの有様を見て覚えず失笑するのを禁じ得なかった。 彼は彼の友に 揶揄 ( やゆ )せられたる結果としてまず手初めに吾輩を写生しつつあるのである。 吾輩はすでに 十分 ( じゅうぶん )寝た。 欠伸 ( あくび )がしたくてたまらない。 しかしせっかく主人が熱心に筆を 執 ( と )っているのを動いては気の毒だと思って、じっと 辛棒 ( しんぼう )しておった。 彼は今吾輩の輪廓をかき上げて顔のあたりを 色彩 ( いろど )っている。 吾輩は自白する。 吾輩は猫として決して上乗の出来ではない。 背といい毛並といい顔の造作といいあえて他の猫に 勝 ( まさ )るとは決して思っておらん。 しかしいくら不器量の吾輩でも、今吾輩の主人に 描 ( えが )き出されつつあるような妙な姿とは、どうしても思われない。 第一色が違う。 吾輩は 波斯産 ( ペルシャさん )の猫のごとく黄を含める淡灰色に 漆 ( うるし )のごとき 斑入 ( ふい )りの皮膚を有している。 これだけは誰が見ても疑うべからざる事実と思う。 しかるに今主人の彩色を見ると、黄でもなければ黒でもない、灰色でもなければ 褐色 ( とびいろ )でもない、さればとてこれらを交ぜた色でもない。 ただ一種の色であるというよりほかに評し方のない色である。 その上不思議な事は眼がない。 もっともこれは寝ているところを写生したのだから無理もないが眼らしい所さえ見えないから 盲猫 ( めくら )だか寝ている猫だか判然しないのである。 吾輩は心中ひそかにいくらアンドレア・デル・サルトでもこれではしようがないと思った。 しかしその熱心には感服せざるを得ない。 なるべくなら動かずにおってやりたいと思ったが、さっきから小便が催うしている。 身内 ( みうち )の筋肉はむずむずする。 最早 ( もはや )一分も 猶予 ( ゆうよ )が出来ぬ 仕儀 ( しぎ )となったから、やむをえず失敬して両足を前へ存分のして、首を低く押し出してあーあと 大 ( だい )なる欠伸をした。 さてこうなって見ると、もうおとなしくしていても仕方がない。 どうせ主人の予定は 打 ( ぶ )ち 壊 ( こ )わしたのだから、ついでに裏へ行って用を 足 ( た )そうと思ってのそのそ這い出した。 すると主人は失望と怒りを 掻 ( か )き交ぜたような声をして、座敷の中から「この馬鹿野郎」と 怒鳴 ( どな )った。 この主人は人を 罵 ( ののし )るときは必ず馬鹿野郎というのが癖である。 ほかに悪口の言いようを知らないのだから仕方がないが、今まで辛棒した人の気も知らないで、 無暗 ( むやみ )に馬鹿野郎 呼 ( よば )わりは失敬だと思う。 それも平生吾輩が彼の 背中 ( せなか )へ乗る時に少しは好い顔でもするならこの 漫罵 ( まんば )も甘んじて受けるが、こっちの便利になる事は何一つ快くしてくれた事もないのに、小便に立ったのを馬鹿野郎とは 酷 ( ひど )い。 元来人間というものは自己の力量に慢じてみんな増長している。 少し人間より強いものが出て来て 窘 ( いじ )めてやらなくてはこの先どこまで増長するか分らない。 我儘 ( わがまま )もこのくらいなら我慢するが吾輩は人間の不徳についてこれよりも数倍悲しむべき報道を耳にした事がある。 吾輩の家の裏に十坪ばかりの 茶園 ( ちゃえん )がある。 広くはないが 瀟洒 ( さっぱり )とした心持ち好く日の 当 ( あた )る所だ。 うちの小供があまり騒いで楽々昼寝の出来ない時や、あまり退屈で腹加減のよくない折などは、吾輩はいつでもここへ出て 浩然 ( こうぜん )の気を養うのが例である。 ある小春の穏かな日の二時頃であったが、吾輩は 昼飯後 ( ちゅうはんご )快よく一睡した 後 ( のち )、運動かたがたこの茶園へと 歩 ( ほ )を運ばした。 茶の木の根を一本一本嗅ぎながら、西側の杉垣のそばまでくると、枯菊を押し倒してその上に大きな猫が前後不覚に寝ている。 彼は吾輩の近づくのも 一向 ( いっこう )心付かざるごとく、また心付くも無頓着なるごとく、大きな 鼾 ( いびき )をして長々と体を 横 ( よこた )えて眠っている。 他 ( ひと )の庭内に忍び入りたるものがかくまで平気に 睡 ( ねむ )られるものかと、吾輩は 窃 ( ひそ )かにその大胆なる度胸に驚かざるを得なかった。 彼は純粋の黒猫である。 わずかに 午 ( ご )を過ぎたる太陽は、透明なる光線を彼の皮膚の上に 抛 ( な )げかけて、きらきらする 柔毛 ( にこげ )の間より眼に見えぬ炎でも 燃 ( も )え 出 ( い )ずるように思われた。 彼は猫中の大王とも云うべきほどの偉大なる体格を有している。 吾輩の倍はたしかにある。 吾輩は嘆賞の念と、好奇の心に前後を忘れて彼の前に 佇立 ( ちょりつ )して余念もなく 眺 ( なが )めていると、静かなる小春の風が、杉垣の上から出たる 梧桐 ( ごとう )の枝を 軽 ( かろ )く誘ってばらばらと二三枚の葉が枯菊の茂みに落ちた。 大王はかっとその 真丸 ( まんまる )の眼を開いた。 今でも記憶している。 その眼は人間の珍重する 琥珀 ( こはく )というものよりも 遥 ( はる )かに美しく輝いていた。 彼は身動きもしない。 双眸 ( そうぼう )の奥から射るごとき光を吾輩の 矮小 ( わいしょう )なる 額 ( ひたい )の上にあつめて、 御めえは一体何だと云った。 大王にしては少々言葉が 卑 ( いや )しいと思ったが何しろその声の底に犬をも 挫 ( ひ )しぐべき力が 籠 ( こも )っているので吾輩は少なからず恐れを 抱 ( いだ )いた。 しかし 挨拶 ( あいさつ )をしないと 険呑 ( けんのん )だと思ったから「吾輩は猫である。 名前はまだない」となるべく平気を 装 ( よそお )って冷然と答えた。 しかしこの時吾輩の心臓はたしかに平時よりも烈しく鼓動しておった。 彼は 大 ( おおい )に 軽蔑 ( けいべつ )せる調子で「何、猫だ? 猫が聞いてあきれらあ。 全 ( ぜん )てえどこに住んでるんだ」随分 傍若無人 ( ぼうじゃくぶじん )である。 「吾輩はここの教師の 家 ( うち )にいるのだ」「どうせそんな事だろうと思った。 いやに 瘠 ( や )せてるじゃねえか」と大王だけに 気焔 ( きえん )を吹きかける。 言葉付から察するとどうも良家の猫とも思われない。 しかしその 膏切 ( あぶらぎ )って肥満しているところを見ると御馳走を食ってるらしい、豊かに暮しているらしい。 吾輩は「そう云う君は一体誰だい」と聞かざるを得なかった。 「 己 ( お )れあ車屋の 黒 ( くろ )よ」 昂然 ( こうぜん )たるものだ。 車屋の黒はこの近辺で知らぬ者なき乱暴猫である。 しかし車屋だけに強いばかりでちっとも教育がないからあまり誰も交際しない。 同盟敬遠主義の 的 ( まと )になっている奴だ。 吾輩は彼の名を聞いて少々尻こそばゆき感じを起すと同時に、一方では少々 軽侮 ( けいぶ )の念も生じたのである。 吾輩はまず彼がどのくらい無学であるかを 試 ( ため )してみようと思って 左 ( さ )の問答をして見た。 「一体車屋と教師とはどっちがえらいだろう」 「車屋の方が強いに 極 ( きま )っていらあな。 御めえの うちの主人を見ねえ、まるで骨と皮ばかりだぜ」 「君も車屋の猫だけに 大分 ( だいぶ )強そうだ。 車屋にいると 御馳走 ( ごちそう )が食えると見えるね」 「 何 ( なあ )に おれなんざ、どこの国へ行ったって食い物に不自由はしねえつもりだ。 御めえなんかも 茶畠 ( ちゃばたけ )ばかりぐるぐる廻っていねえで、ちっと 己 ( おれ )の 後 ( あと )へくっ付いて来て見ねえ。 一と月とたたねえうちに見違えるように太れるぜ」 「追ってそう願う事にしよう。 しかし 家 ( うち )は教師の方が車屋より大きいのに住んでいるように思われる」 「 箆棒 ( べらぼう )め、うちなんかいくら大きくたって腹の 足 ( た )しになるもんか」 彼は 大 ( おおい )に 肝癪 ( かんしゃく )に 障 ( さわ )った様子で、 寒竹 ( かんちく )をそいだような耳をしきりとぴく付かせてあららかに立ち去った。 吾輩が車屋の黒と 知己 ( ちき )になったのはこれからである。 その 後 ( ご )吾輩は 度々 ( たびたび )黒と 邂逅 ( かいこう )する。 邂逅する 毎 ( ごと )に彼は車屋相当の 気焔 ( きえん )を吐く。 先に吾輩が耳にしたという不徳事件も実は黒から聞いたのである。 或る日例のごとく吾輩と黒は暖かい 茶畠 ( ちゃばたけ )の中で 寝転 ( ねころ )びながらいろいろ雑談をしていると、彼はいつもの 自慢話 ( じまんばな )しをさも新しそうに繰り返したあとで、吾輩に向って 下 ( しも )のごとく質問した。 「 御めえは今までに鼠を何匹とった事がある」智識は黒よりも余程発達しているつもりだが腕力と勇気とに至っては 到底 ( とうてい )黒の比較にはならないと覚悟はしていたものの、この問に接したる時は、さすがに 極 ( きま )りが 善 ( よ )くはなかった。 けれども事実は事実で 詐 ( いつわ )る訳には行かないから、吾輩は「実はとろうとろうと思ってまだ 捕 ( と )らない」と答えた。 黒は彼の鼻の先からぴんと 突張 ( つっぱ )っている長い 髭 ( ひげ )をびりびりと 震 ( ふる )わせて非常に笑った。 元来黒は自慢をする 丈 ( だけ )にどこか足りないところがあって、彼の 気焔 ( きえん )を感心したように 咽喉 ( のど )をころころ鳴らして謹聴していればはなはだ 御 ( ぎょ )しやすい猫である。 吾輩は彼と近付になってから 直 ( すぐ )にこの呼吸を飲み込んだからこの場合にもなまじい 己 ( おの )れを弁護してますます形勢をわるくするのも 愚 ( ぐ )である、いっその事彼に自分の手柄話をしゃべらして御茶を濁すに 若 ( し )くはないと思案を 定 ( さだ )めた。 そこでおとなしく「君などは年が年であるから 大分 ( だいぶん )とったろう」とそそのかして見た。 果然彼は 墻壁 ( しょうへき )の 欠所 ( けっしょ )に 吶喊 ( とっかん )して来た。 「たんとでもねえが三四十はとったろう」とは得意気なる彼の答であった。 彼はなお語をつづけて「鼠の百や二百は一人でいつでも引き受けるが いたちってえ奴は手に合わねえ。 一度 いたちに向って 酷 ( ひど )い目に 逢 ( あ )った」「へえなるほど」と 相槌 ( あいづち )を打つ。 黒は大きな眼をぱちつかせて云う。 「去年の大掃除の時だ。 うちの亭主が 石灰 ( いしばい )の袋を持って 椽 ( えん )の下へ 這 ( は )い込んだら 御めえ大きな いたちの野郎が 面喰 ( めんくら )って飛び出したと思いねえ」「ふん」と感心して見せる。 「 いたちってけども何鼠の少し大きいぐれえのものだ。 こん 畜生 ( ちきしょう )って気で追っかけてとうとう 泥溝 ( どぶ )の中へ追い込んだと思いねえ」「うまくやったね」と 喝采 ( かっさい )してやる。 「ところが 御めえいざってえ段になると奴め 最後 ( さいご )っ 屁 ( ぺ )をこきゃがった。 臭 ( くせ )えの臭くねえのってそれからってえものは いたちを見ると胸が悪くならあ」彼はここに至ってあたかも去年の臭気を 今 ( いま )なお感ずるごとく前足を揚げて鼻の頭を二三遍なで廻わした。 吾輩も少々気の毒な感じがする。 ちっと景気を付けてやろうと思って「しかし鼠なら君に 睨 ( にら )まれては百年目だろう。 君はあまり鼠を 捕 ( と )るのが名人で鼠ばかり食うものだからそんなに肥って色つやが善いのだろう」黒の御機嫌をとるためのこの質問は不思議にも反対の結果を 呈出 ( ていしゅつ )した。 彼は 喟然 ( きぜん )として 大息 ( たいそく )していう。 「 考 ( かん )げえるとつまらねえ。 人のとった鼠をみんな取り上げやがって交番へ持って行きゃあがる。 交番じゃ誰が 捕 ( と )ったか分らねえからその たんびに五銭ずつくれるじゃねえか。 うちの亭主なんか 己 ( おれ )の御蔭でもう壱円五十銭くらい 儲 ( もう )けていやがる癖に、 碌 ( ろく )なものを食わせた事もありゃしねえ。 おい人間てものあ 体 ( てい )の 善 ( い )い泥棒だぜ」さすが無学の黒もこのくらいの 理窟 ( りくつ )はわかると見えてすこぶる 怒 ( おこ )った 容子 ( ようす )で背中の毛を 逆立 ( さかだ )てている。 吾輩は少々気味が悪くなったから善い加減にその場を 胡魔化 ( ごまか )して 家 ( うち )へ帰った。 この時から吾輩は決して鼠をとるまいと決心した。 しかし黒の子分になって鼠以外の御馳走を 猟 ( あさ )ってあるく事もしなかった。 御馳走を食うよりも寝ていた方が気楽でいい。 教師の 家 ( うち )にいると猫も教師のような性質になると見える。 要心しないと今に胃弱になるかも知れない。 教師といえば吾輩の主人も近頃に至っては 到底 ( とうてい )水彩画において 望 ( のぞみ )のない事を悟ったものと見えて十二月一日の日記にこんな事をかきつけた。 あの人は 大分 ( だいぶ ) 放蕩 ( ほうとう )をした人だと云うがなるほど 通人 ( つうじん )らしい 風采 ( ふうさい )をしている。 あの人の妻君は芸者だそうだ、 羨 ( うらや )ましい事である。 元来放蕩家を悪くいう人の大部分は放蕩をする資格のないものが多い。 また放蕩家をもって自任する連中のうちにも、放蕩する資格のないものが多い。 これらは余儀なくされないのに無理に進んでやるのである。 あたかも吾輩の水彩画に於けるがごときもので到底卒業する気づかいはない。 しかるにも関せず、自分だけは通人だと思って 済 ( すま )している。 料理屋の酒を飲んだり待合へ 這入 ( はい )るから通人となり得るという論が立つなら、吾輩も 一廉 ( ひとかど )の水彩画家になり得る 理窟 ( りくつ )だ。 吾輩の水彩画のごときはかかない方がましであると同じように、 愚昧 ( ぐまい )なる通人よりも山出しの 大野暮 ( おおやぼ )の方が 遥 ( はる )かに上等だ。 通人論 ( つうじんろん )はちょっと 首肯 ( しゅこう )しかねる。 また芸者の妻君を羨しいなどというところは教師としては口にすべからざる愚劣の考であるが、自己の水彩画における批評眼だけはたしかなものだ。 主人はかくのごとく 自知 ( じち )の 明 ( めい )あるにも関せずその 自惚心 ( うぬぼれしん )はなかなか抜けない。 中二日 ( なかふつか )置いて十二月四日の日記にこんな事を書いている。 昨夜 ( ゆうべ )は僕が水彩画をかいて到底物にならんと思って、そこらに 抛 ( ほう )って置いたのを誰かが立派な額にして 欄間 ( らんま )に 懸 ( か )けてくれた夢を見た。 さて額になったところを見ると我ながら急に上手になった。 非常に嬉しい。 これなら立派なものだと 独 ( ひと )りで眺め暮らしていると、夜が明けて眼が 覚 ( さ )めてやはり元の通り下手である事が朝日と共に明瞭になってしまった。 主人は夢の 裡 ( うち )まで水彩画の未練を 背負 ( しょ )ってあるいていると見える。 これでは水彩画家は無論 夫子 ( ふうし )の 所謂 ( いわゆる )通人にもなれない 質 ( たち )だ。 主人が水彩画を夢に見た翌日例の金縁 眼鏡 ( めがね )の美学者が久し振りで主人を訪問した。 彼は座につくと 劈頭 ( へきとう )第一に「 画 ( え )はどうかね」と口を切った。 主人は平気な顔をして「君の忠告に従って写生を 力 ( つと )めているが、なるほど写生をすると今まで気のつかなかった物の形や、色の精細な変化などがよく分るようだ。 西洋では 昔 ( むか )しから写生を主張した結果 今日 ( こんにち )のように発達したものと思われる。 さすがアンドレア・デル・サルトだ」と日記の事は おくびにも出さないで、またアンドレア・デル・サルトに感心する。 美学者は笑いながら「実は君、あれは 出鱈目 ( でたらめ )だよ」と頭を 掻 ( か )く。 「何が」と主人はまだ ( いつ )わられた事に気がつかない。 「何がって君のしきりに感服しているアンドレア・デル・サルトさ。 あれは僕のちょっと 捏造 ( ねつぞう )した話だ。 君がそんなに 真面目 ( まじめ )に信じようとは思わなかったハハハハ」と大喜悦の 体 ( てい )である。 吾輩は椽側でこの対話を聞いて彼の今日の日記にはいかなる事が 記 ( しる )さるるであろうかと 予 ( あらかじ )め想像せざるを得なかった。 この美学者はこんな 好 ( いい )加減な事を吹き散らして人を 担 ( かつ )ぐのを唯一の 楽 ( たのしみ )にしている男である。 彼はアンドレア・デル・サルト事件が主人の 情線 ( じょうせん )にいかなる響を伝えたかを 毫 ( ごう )も顧慮せざるもののごとく得意になって 下 ( しも )のような事を 饒舌 ( しゃべ )った。 「いや時々 冗談 ( じょうだん )を言うと人が 真 ( ま )に受けるので 大 ( おおい )に 滑稽的 ( こっけいてき )美感を 挑撥 ( ちょうはつ )するのは面白い。 せんだってある学生にニコラス・ニックルベーがギボンに忠告して彼の一世の大著述なる仏国革命史を仏語で書くのをやめにして英文で出版させたと言ったら、その学生がまた馬鹿に記憶の善い男で、日本文学会の演説会で真面目に僕の話した通りを繰り返したのは滑稽であった。 ところがその時の傍聴者は約百名ばかりであったが、皆熱心にそれを傾聴しておった。 それからまだ面白い話がある。 せんだって或る文学者のいる席でハリソンの歴史小説セオファーノの 話 ( はな )しが出たから僕はあれは歴史小説の 中 ( うち )で 白眉 ( はくび )である。 ことに女主人公が死ぬところは 鬼気 ( きき )人を襲うようだと評したら、僕の向うに坐っている知らんと云った事のない先生が、そうそうあすこは実に名文だといった。 それで僕はこの男もやはり僕同様この小説を読んでおらないという事を知った」神経胃弱性の主人は眼を丸くして問いかけた。 「そんな 出鱈目 ( でたらめ )をいってもし相手が読んでいたらどうするつもりだ」あたかも人を 欺 ( あざむ )くのは 差支 ( さしつかえ )ない、ただ 化 ( ばけ )の 皮 ( かわ )があらわれた時は困るじゃないかと感じたもののごとくである。 美学者は少しも動じない。 「なにその 時 ( とき )ゃ別の本と間違えたとか何とか云うばかりさ」と云ってけらけら笑っている。 この美学者は金縁の眼鏡は掛けているがその性質が車屋の黒に似たところがある。 主人は黙って日の出を輪に吹いて吾輩にはそんな勇気はないと云わんばかりの顔をしている。 美学者はそれだから 画 ( え )をかいても駄目だという目付で「しかし 冗談 ( じょうだん )は冗談だが画というものは実際むずかしいものだよ、レオナルド・ダ・ヴィンチは門下生に寺院の壁の しみを写せと教えた事があるそうだ。 なるほど 雪隠 ( せついん )などに 這入 ( はい )って雨の漏る壁を余念なく眺めていると、なかなかうまい模様画が自然に出来ているぜ。 君注意して写生して見給えきっと面白いものが出来るから」「また 欺 ( だま )すのだろう」「いえこれだけはたしかだよ。 実際奇警な語じゃないか、ダ・ヴィンチでもいいそうな事だあね」「なるほど奇警には相違ないな」と主人は半分降参をした。 しかし彼はまだ雪隠で写生はせぬようだ。 車屋の黒はその 後 ( ご ) 跛 ( びっこ )になった。 彼の光沢ある毛は 漸々 ( だんだん )色が 褪 ( さ )めて抜けて来る。 吾輩が 琥珀 ( こはく )よりも美しいと評した彼の眼には 眼脂 ( めやに )が一杯たまっている。 ことに著るしく吾輩の注意を 惹 ( ひ )いたのは彼の元気の消沈とその体格の悪くなった事である。 吾輩が例の 茶園 ( ちゃえん )で彼に逢った最後の日、どうだと云って尋ねたら「 いたちの 最後屁 ( さいごっぺ )と 肴屋 ( さかなや )の 天秤棒 ( てんびんぼう )には 懲々 ( こりごり )だ」といった。 赤松の間に二三段の 紅 ( こう )を綴った 紅葉 ( こうよう )は 昔 ( むか )しの夢のごとく散って つくばいに近く代る代る 花弁 ( はなびら )をこぼした 紅白 ( こうはく )の 山茶花 ( さざんか )も残りなく落ち尽した。 三間半の南向の椽側に冬の日脚が早く傾いて 木枯 ( こがらし )の吹かない日はほとんど 稀 ( まれ )になってから吾輩の昼寝の時間も 狭 ( せば )められたような気がする。 主人は毎日学校へ行く。 帰ると書斎へ立て 籠 ( こも )る。 人が来ると、教師が 厭 ( いや )だ厭だという。 水彩画も滅多にかかない。 タカジヤスターゼも功能がないといってやめてしまった。 小供は感心に休まないで幼稚園へかよう。 帰ると唱歌を歌って、 毬 ( まり )をついて、時々吾輩を 尻尾 ( しっぽ )でぶら下げる。 吾輩は 御馳走 ( ごちそう )も食わないから別段 肥 ( ふと )りもしないが、まずまず健康で 跛 ( びっこ )にもならずにその日その日を暮している。 鼠は決して取らない。 おさんは 未 ( いま )だに 嫌 ( きら )いである。 名前はまだつけてくれないが、欲をいっても際限がないから 生涯 ( しょうがい )この教師の 家 ( うち )で無名の猫で終るつもりだ。 吾輩は新年来多少有名になったので、猫ながらちょっと鼻が高く感ぜらるるのはありがたい。 元朝早々主人の 許 ( もと )へ一枚の 絵端書 ( えはがき )が来た。 これは彼の交友某画家からの年始状であるが、上部を赤、下部を 深緑 ( ふかみど )りで塗って、その真中に一の動物が 蹲踞 ( うずくま )っているところをパステルで書いてある。 主人は例の書斎でこの絵を、横から見たり、 竪 ( たて )から眺めたりして、うまい色だなという。 すでに一応感服したものだから、もうやめにするかと思うとやはり横から見たり、竪から見たりしている。 からだを 拗 ( ね )じ向けたり、手を延ばして年寄が 三世相 ( さんぜそう )を見るようにしたり、または窓の方へむいて鼻の先まで持って来たりして見ている。 早くやめてくれないと 膝 ( ひざ )が揺れて 険呑 ( けんのん )でたまらない。 ようやくの事で動揺があまり 劇 ( はげ )しくなくなったと思ったら、小さな声で一体何をかいたのだろうと 云 ( い )う。 主人は絵端書の色には感服したが、かいてある動物の正体が分らぬので、さっきから苦心をしたものと見える。 そんな分らぬ絵端書かと思いながら、寝ていた眼を上品に 半 ( なか )ば開いて、落ちつき払って見ると 紛 ( まぎ )れもない、自分の肖像だ。 主人のようにアンドレア・デル・サルトを 極 ( き )め込んだものでもあるまいが、画家だけに形体も色彩もちゃんと整って出来ている。 誰が見たって猫に相違ない。 少し眼識のあるものなら、猫の 中 ( うち )でも 他 ( ほか )の猫じゃない吾輩である事が判然とわかるように立派に 描 ( か )いてある。 このくらい明瞭な事を分らずにかくまで苦心するかと思うと、少し人間が気の毒になる。 出来る事ならその絵が吾輩であると云う事を知らしてやりたい。 吾輩であると云う事はよし分らないにしても、せめて猫であるという事だけは分らしてやりたい。 しかし人間というものは 到底 ( とうてい )吾輩 猫属 ( ねこぞく )の言語を解し得るくらいに天の 恵 ( めぐみ )に浴しておらん動物であるから、残念ながらそのままにしておいた。 ちょっと読者に断っておきたいが、元来人間が何ぞというと猫々と、事もなげに軽侮の口調をもって吾輩を評価する癖があるははなはだよくない。 人間の 糟 ( かす )から牛と馬が出来て、牛と馬の糞から猫が製造されたごとく考えるのは、自分の無智に心付かんで高慢な顔をする教師などにはありがちの事でもあろうが、はたから見てあまり見っともいい者じゃない。 いくら猫だって、そう粗末簡便には出来ぬ。 よそ目には一列一体、平等無差別、どの猫も自家固有の特色などはないようであるが、猫の社会に 這入 ( はい )って見るとなかなか複雑なもので十人 十色 ( といろ )という人間界の 語 ( ことば )はそのままここにも応用が出来るのである。 目付でも、鼻付でも、毛並でも、足並でも、みんな違う。 髯 ( ひげ )の張り具合から耳の立ち 按排 ( あんばい )、 尻尾 ( しっぽ )の垂れ加減に至るまで同じものは一つもない。 器量、不器量、好き嫌い、 粋無粋 ( すいぶすい )の 数 ( かず )を 悉 ( つ )くして千差万別と云っても差支えないくらいである。 そのように判然たる区別が存しているにもかかわらず、人間の眼はただ向上とか何とかいって、空ばかり見ているものだから、吾輩の性質は無論 相貌 ( そうぼう )の末を識別する事すら到底出来ぬのは気の毒だ。 同類相求むとは 昔 ( むか )しからある 語 ( ことば )だそうだがその通り、 餅屋 ( もちや )は餅屋、猫は猫で、猫の事ならやはり猫でなくては分らぬ。 いくら人間が発達したってこればかりは駄目である。 いわんや実際をいうと彼等が 自 ( みずか )ら信じているごとくえらくも何ともないのだからなおさらむずかしい。 またいわんや同情に乏しい吾輩の主人のごときは、相互を残りなく解するというが愛の第一義であるということすら分らない男なのだから仕方がない。 彼は性の悪い 牡蠣 ( かき )のごとく書斎に吸い付いて、かつて外界に向って口を 開 ( ひら )いた事がない。 それで自分だけはすこぶる達観したような 面構 ( つらがまえ )をしているのはちょっとおかしい。 達観しない証拠には現に吾輩の肖像が眼の前にあるのに少しも悟った様子もなく今年は征露の第二年目だから大方熊の 画 ( え )だろうなどと気の知れぬことをいってすましているのでもわかる。 吾輩が主人の 膝 ( ひざ )の上で眼をねむりながらかく考えていると、やがて下女が第二の 絵端書 ( えはがき )を持って来た。 見ると活版で舶来の猫が四五 疋 ( ひき )ずらりと行列してペンを握ったり書物を開いたり勉強をしている。 その内の一疋は席を離れて机の角で西洋の猫じゃ猫じゃを 躍 ( おど )っている。 その上に日本の墨で「吾輩は猫である」と黒々とかいて、右の 側 ( わき )に書を読むや 躍 ( おど )るや猫の 春一日 ( はるひとひ )という俳句さえ 認 ( したた )められてある。 これは主人の旧門下生より来たので誰が見たって一見して意味がわかるはずであるのに、 迂濶 ( うかつ )な主人はまだ悟らないと見えて不思議そうに首を 捻 ( ひね )って、はてな今年は猫の年かなと 独言 ( ひとりごと )を言った。 吾輩がこれほど有名になったのを 未 ( ま )だ気が着かずにいると見える。 ところへ下女がまた第三の端書を持ってくる。 今度は絵端書ではない。 恭賀新年とかいて、 傍 ( かたわ )らに 乍恐縮 ( きょうしゅくながら )かの猫へも 宜 ( よろ )しく 御伝声 ( ごでんせい ) 奉願上候 ( ねがいあげたてまつりそろ )とある。 いかに 迂遠 ( うえん )な主人でもこう明らさまに書いてあれば分るものと見えてようやく気が付いたようにフンと言いながら吾輩の顔を見た。 その眼付が今までとは違って多少尊敬の意を含んでいるように思われた。 今まで世間から存在を認められなかった主人が急に一個の 新面目 ( しんめんぼく )を施こしたのも、全く吾輩の御蔭だと思えばこのくらいの眼付は至当だろうと考える。 おりから門の 格子 ( こうし )がチリン、チリン、チリリリリンと鳴る。 大方来客であろう、来客なら下女が取次に出る。 吾輩は 肴屋 ( さかなや )の梅公がくる時のほかは出ない事に 極 ( き )めているのだから、平気で、もとのごとく主人の膝に坐っておった。 すると主人は高利貸にでも飛び込まれたように不安な顔付をして玄関の方を見る。 何でも年賀の客を受けて酒の相手をするのが厭らしい。 人間もこのくらい 偏屈 ( へんくつ )になれば申し分はない。 そんなら早くから外出でもすればよいのにそれほどの勇気も無い。 いよいよ牡蠣の 根性 ( こんじょう )をあらわしている。 しばらくすると下女が来て 寒月 ( かんげつ )さんがおいでになりましたという。 この寒月という男はやはり主人の旧門下生であったそうだが、今では学校を卒業して、何でも主人より立派になっているという 話 ( はな )しである。 この男がどういう訳か、よく主人の所へ遊びに来る。 来ると自分を 恋 ( おも )っている女が有りそうな、無さそうな、世の中が面白そうな、つまらなそうな、 凄 ( すご )いような 艶 ( つや )っぽいような文句ばかり並べては帰る。 主人のようなしなびかけた人間を求めて、わざわざこんな話しをしに来るのからして 合点 ( がてん )が行かぬが、あの 牡蠣的 ( かきてき )主人がそんな談話を聞いて時々 相槌 ( あいづち )を打つのはなお面白い。 「しばらく御無沙汰をしました。 実は去年の暮から 大 ( おおい )に活動しているものですから、 出 ( で )よう出ようと思っても、ついこの方角へ足が向かないので」と羽織の 紐 ( ひも )をひねくりながら 謎 ( なぞ )見たような事をいう。 「どっちの方角へ足が向くかね」と主人は真面目な顔をして、 黒木綿 ( くろもめん )の紋付羽織の 袖口 ( そでぐち )を引張る。 この羽織は木綿で ゆきが短かい、下からべんべら者が左右へ五分くらいずつはみ出している。 「エヘヘヘ少し違った方角で」と寒月君が笑う。 見ると今日は前歯が一枚欠けている。 「君歯をどうかしたかね」と主人は問題を転じた。 「ええ実はある所で 椎茸 ( しいたけ )を食いましてね」「何を食ったって?」「その、少し椎茸を食ったんで。 椎茸の 傘 ( かさ )を前歯で噛み切ろうとしたらぼろりと歯が欠けましたよ」「椎茸で前歯がかけるなんざ、何だか 爺々臭 ( じじいくさ )いね。 俳句にはなるかも知れないが、恋にはならんようだな」と平手で吾輩の頭を 軽 ( かろ )く叩く。 「ああその猫が例のですか、なかなか肥ってるじゃありませんか、それなら車屋の黒にだって負けそうもありませんね、立派なものだ」と寒月君は 大 ( おおい )に吾輩を 賞 ( ほ )める。 「近頃 大分 ( だいぶ )大きくなったのさ」と自慢そうに頭をぽかぽかなぐる。 賞められたのは得意であるが頭が少々痛い。 「一昨夜もちょいと合奏会をやりましてね」と寒月君はまた話しをもとへ戻す。 「どこで」「どこでもそりゃ御聞きにならんでもよいでしょう。 ヴァイオリンが三 挺 ( ちょう )とピヤノの伴奏でなかなか面白かったです。 ヴァイオリンも三挺くらいになると下手でも聞かれるものですね。 二人は女で 私 ( わたし )がその中へまじりましたが、自分でも善く 弾 ( ひ )けたと思いました」「ふん、そしてその女というのは何者かね」と主人は 羨 ( うらや )ましそうに問いかける。 元来主人は平常 枯木寒巌 ( こぼくかんがん )のような顔付はしているものの実のところは決して婦人に冷淡な方ではない、かつて西洋の或る小説を読んだら、その中にある一人物が出て来て、それが大抵の婦人には必ずちょっと 惚 ( ほ )れる。 勘定をして見ると往来を通る婦人の 七割弱には 恋着 ( れんちゃく )するという事が 諷刺的 ( ふうしてき )に書いてあったのを見て、これは真理だと感心したくらいな男である。 そんな浮気な男が 何故 ( なぜ )牡蠣的生涯を送っているかと云うのは吾輩猫などには 到底 ( とうてい )分らない。 或人は失恋のためだとも云うし、或人は胃弱のせいだとも云うし、また或人は金がなくて臆病な 性質 ( たち )だからだとも云う。 どっちにしたって明治の歴史に関係するほどな人物でもないのだから構わない。 しかし寒月君の 女連 ( おんなづ )れを羨まし 気 ( げ )に尋ねた事だけは事実である。 寒月君は面白そうに 口取 ( くちとり )の 蒲鉾 ( かまぼこ )を箸で挟んで半分前歯で食い切った。 吾輩はまた欠けはせぬかと心配したが今度は大丈夫であった。 「なに二人とも 去 ( さ )る所の令嬢ですよ、御存じの 方 ( かた )じゃありません」と 余所余所 ( よそよそ )しい返事をする。 「ナール」と主人は引張ったが「ほど」を略して考えている。 寒月君はもう 善 ( い )い加減な時分だと思ったものか「どうも好い天気ですな、 御閑 ( おひま )ならごいっしょに散歩でもしましょうか、旅順が落ちたので市中は大変な景気ですよ」と 促 ( うな )がして見る。 主人は旅順の陥落より 女連 ( おんなづれ )の身元を聞きたいと云う顔で、しばらく考え込んでいたがようやく決心をしたものと見えて「それじゃ出るとしよう」と思い切って立つ。 やはり黒木綿の紋付羽織に、兄の 紀念 ( かたみ )とかいう二十年来 着古 ( きふ )るした 結城紬 ( ゆうきつむぎ )の綿入を着たままである。 いくら結城紬が丈夫だって、こう着つづけではたまらない。 所々が薄くなって日に透かして見ると裏から つぎを当てた針の目が見える。 主人の服装には 師走 ( しわす )も正月もない。 ふだん着も 余所 ( よそ )ゆきもない。 出るときは 懐手 ( ふところで )をしてぶらりと出る。 ほかに着る物がないからか、有っても面倒だから着換えないのか、吾輩には分らぬ。 ただしこれだけは失恋のためとも思われない。 両人 ( ふたり )が出て行ったあとで、吾輩はちょっと失敬して寒月君の食い切った 蒲鉾 ( かまぼこ )の残りを 頂戴 ( ちょうだい )した。 吾輩もこの頃では普通一般の猫ではない。 まず 桃川如燕 ( ももかわじょえん )以後の猫か、グレーの金魚を 偸 ( ぬす )んだ猫くらいの資格は充分あると思う。 車屋の黒などは 固 ( もと )より眼中にない。 蒲鉾の 一切 ( ひときれ )くらい頂戴したって人からかれこれ云われる事もなかろう。 それにこの人目を忍んで 間食 ( かんしょく )をするという癖は、何も吾等猫族に限った事ではない。 うちの 御三 ( おさん )などはよく細君の留守中に餅菓子などを失敬しては頂戴し、頂戴しては失敬している。 御三ばかりじゃない現に上品な 仕付 ( しつけ )を受けつつあると細君から 吹聴 ( ふいちょう )せられている 小児 ( こども )ですらこの傾向がある。 四五日前のことであったが、二人の小供が馬鹿に早くから眼を覚まして、まだ主人夫婦の寝ている間に 対 ( むか )い合うて食卓に着いた。 彼等は毎朝主人の食う 麺麭 ( パン )の幾分に、砂糖をつけて食うのが例であるが、この日はちょうど 砂糖壺 ( さとうつぼ )が 卓 ( たく )の上に置かれて 匙 ( さじ )さえ添えてあった。 いつものように砂糖を分配してくれるものがないので、大きい方がやがて壺の中から 一匙 ( ひとさじ )の砂糖をすくい出して自分の皿の上へあけた。 すると小さいのが姉のした通り同分量の砂糖を同方法で自分の皿の上にあけた。 少 ( しば )らく 両人 ( りょうにん )は 睨 ( にら )み合っていたが、大きいのがまた匙をとって一杯をわが皿の上に加えた。 小さいのもすぐ匙をとってわが分量を姉と同一にした。 すると姉がまた一杯すくった。 妹も負けずに一杯を附加した。 姉がまた壺へ手を懸ける、妹がまた匙をとる。 見ている 間 ( ま )に一杯一杯一杯と重なって、ついには 両人 ( ふたり )の皿には山盛の砂糖が 堆 ( うずたか )くなって、壺の中には一匙の砂糖も余っておらんようになったとき、主人が寝ぼけ 眼 ( まなこ )を 擦 ( こす )りながら寝室を出て来てせっかくしゃくい出した砂糖を元のごとく壺の中へ入れてしまった。 こんなところを見ると、人間は利己主義から割り出した公平という念は猫より 優 ( まさ )っているかも知れぬが、 智慧 ( ちえ )はかえって猫より劣っているようだ。 そんなに山盛にしないうちに早く 甞 ( な )めてしまえばいいにと思ったが、例のごとく、吾輩の言う事などは通じないのだから、気の毒ながら 御櫃 ( おはち )の上から黙って見物していた。 寒月君と出掛けた主人はどこをどう 歩行 ( ある )いたものか、その晩遅く帰って来て、翌日食卓に 就 ( つ )いたのは九時頃であった。 例の御櫃の上から拝見していると、主人はだまって 雑煮 ( ぞうに )を食っている。 代えては食い、代えては食う。 餅の切れは小さいが、何でも 六切 ( むきれ )か 七切 ( ななきれ )食って、最後の一切れを椀の中へ残して、もうよそうと 箸 ( はし )を置いた。 他人がそんな 我儘 ( わがまま )をすると、なかなか承知しないのであるが、主人の威光を振り廻わして得意なる彼は、濁った汁の中に 焦 ( こ )げ 爛 ( ただ )れた餅の死骸を見て平気ですましている。 妻君が 袋戸 ( ふくろど )の奥からタカジヤスターゼを出して卓の上に置くと、主人は「それは 利 ( き )かないから飲まん」という。 「でもあなた 澱粉質 ( でんぷんしつ )のものには大変功能があるそうですから、召し上ったらいいでしょう」と飲ませたがる。 「澱粉だろうが何だろうが駄目だよ」と 頑固 ( がんこ )に出る。 「あなたはほんとに 厭 ( あ )きっぽい」と細君が 独言 ( ひとりごと )のようにいう。 「厭きっぽいのじゃない薬が利かんのだ」「それだってせんだってじゅうは大変によく利くよく利くとおっしゃって毎日毎日上ったじゃありませんか」「こないだうちは利いたのだよ、この頃は利かないのだよ」と 対句 ( ついく )のような返事をする。 「そんなに飲んだり 止 ( や )めたりしちゃ、いくら功能のある薬でも利く 気遣 ( きづか )いはありません、もう少し 辛防 ( しんぼう )がよくなくっちゃあ胃弱なんぞはほかの病気たあ違って直らないわねえ」とお盆を持って控えた 御三 ( おさん )を顧みる。 「それは本当のところでございます。 もう少し召し上ってご覧にならないと、とても 善 ( よ )い薬か悪い薬かわかりますまい」と御三は一も二もなく細君の肩を持つ。 「何でもいい、飲まんのだから飲まんのだ、女なんかに何がわかるものか、黙っていろ」「どうせ女ですわ」と細君がタカジヤスターゼを主人の前へ突き付けて是非 詰腹 ( つめばら )を切らせようとする。 主人は何にも云わず立って書斎へ 這入 ( はい )る。 細君と御三は顔を見合せてにやにやと笑う。 こんなときに 後 ( あと )からくっ付いて行って 膝 ( ひざ )の上へ乗ると、大変な目に 逢 ( あ )わされるから、そっと庭から廻って書斎の椽側へ 上 ( あが )って障子の 隙 ( すき )から 覗 ( のぞ )いて見ると、主人はエピクテタスとか云う人の本を 披 ( ひら )いて見ておった。 もしそれが 平常 ( いつも )の通りわかるならちょっとえらいところがある。 五六分するとその本を 叩 ( たた )き付けるように机の上へ 抛 ( ほう )り出す。 大方そんな事だろうと思いながらなお注意していると、今度は日記帳を出して 下 ( しも )のような事を書きつけた。 宝丹 ( ほうたん )の 角 ( かど )を曲るとまた一人芸者が来た。 これは 背 ( せい )のすらりとした 撫肩 ( なでがた )の 恰好 ( かっこう )よく出来上った女で、着ている薄紫の 衣服 ( きもの )も素直に着こなされて上品に見えた。 ただしその声は 旅鴉 ( たびがらす )のごとく 皺枯 ( しゃが )れておったので、せっかくの 風采 ( ふうさい )も 大 ( おおい )に下落したように感ぜられたから、いわゆる源ちゃんなるもののいかなる人なるかを振り向いて見るも面倒になって、 懐手 ( ふところで )のまま 御成道 ( おなりみち )へ出た。 寒月は何となくそわそわしているごとく見えた。 人間の心理ほど 解 ( げ )し難いものはない。 この主人の今の心は 怒 ( おこ )っているのだか、浮かれているのだか、または哲人の遺書に 一道 ( いちどう )の慰安を求めつつあるのか、ちっとも分らない。 世の中を冷笑しているのか、世の中へ 交 ( まじ )りたいのだか、くだらぬ事に 肝癪 ( かんしゃく )を起しているのか、 物外 ( ぶつがい )に 超然 ( ちょうぜん )としているのだかさっぱり 見当 ( けんとう )が付かぬ。 猫などはそこへ行くと単純なものだ。 食いたければ食い、寝たければ寝る、 怒 ( おこ )るときは一生懸命に怒り、泣くときは絶体絶命に泣く。 第一日記などという無用のものは決してつけない。 つける必要がないからである。 主人のように裏表のある人間は日記でも書いて世間に出されない自己の面目を暗室内に発揮する必要があるかも知れないが、我等 猫属 ( ねこぞく )に至ると 行住坐臥 ( ぎょうじゅうざが )、 行屎送尿 ( こうしそうにょう )ことごとく真正の日記であるから、別段そんな面倒な 手数 ( てかず )をして、 己 ( おの )れの 真面目 ( しんめんもく )を保存するには及ばぬと思う。 日記をつけるひまがあるなら椽側に寝ているまでの事さ。 彼の説によるとすべて胃病の源因は漬物にある。 漬物さえ断てば胃病の源を 涸 ( か )らす訳だから本復は疑なしという論法であった。 それから一週間ばかり香の物に 箸 ( はし )を触れなかったが別段の 験 ( げん )も見えなかったから近頃はまた食い出した。 ただし普通のではゆかぬ。 皆川流 ( みながわりゅう )という古流な 揉 ( も )み方で一二度やらせれば大抵の胃病は根治出来る。 安井息軒 ( やすいそっけん )も大変この 按摩術 ( あんまじゅつ )を愛していた。 坂本竜馬 ( さかもとりょうま )のような豪傑でも時々は治療をうけたと云うから、早速 上根岸 ( かみねぎし )まで出掛けて 揉 ( も )まして見た。 ところが骨を 揉 ( も )まなければ 癒 ( なお )らぬとか、臓腑の位置を一度 顛倒 ( てんとう )しなければ根治がしにくいとかいって、それはそれは残酷な 揉 ( も )み方をやる。 後で身体が綿のようになって 昏睡病 ( こんすいびょう )にかかったような心持ちがしたので、一度で閉口してやめにした。 A君は是非固形体を食うなという。 それから、一日牛乳ばかり飲んで暮して見たが、この時は腸の中でどぼりどぼりと音がして大水でも出たように思われて終夜眠れなかった。 B氏は 横膈膜 ( おうかくまく )で呼吸して内臓を運動させれば自然と胃の働きが健全になる訳だから試しにやって御覧という。 これも多少やったが何となく 腹中 ( ふくちゅう )が不安で困る。 それに時々思い出したように一心不乱にかかりはするものの五六分立つと忘れてしまう。 忘れまいとすると横膈膜が気になって本を読む事も文章をかく事も出来ぬ。 美学者の 迷亭 ( めいてい )がこの 体 ( てい )を見て、 産気 ( さんけ )のついた男じゃあるまいし 止 ( よ )すがいいと冷かしたからこの頃は 廃 ( よ )してしまった。 C先生は 蕎麦 ( そば )を食ったらよかろうと云うから、早速 かけと もりをかわるがわる食ったが、これは腹が 下 ( くだ )るばかりで何等の功能もなかった。 余は年来の胃弱を直すために出来得る限りの方法を講じて見たがすべて駄目である。 ただ 昨夜 ( ゆうべ )寒月と傾けた三杯の正宗はたしかに 利目 ( ききめ )がある。 これからは毎晩二三杯ずつ飲む事にしよう。 これも決して長く続く事はあるまい。 主人の心は吾輩の 眼球 ( めだま )のように間断なく変化している。 何をやっても 永持 ( ながもち )のしない男である。 その上日記の上で胃病をこんなに心配している癖に、表向は 大 ( おおい )に痩我慢をするからおかしい。 せんだってその友人で 某 ( なにがし )という学者が尋ねて来て、一種の見地から、すべての病気は父祖の罪悪と自己の罪悪の結果にほかならないと云う議論をした。 大分 ( だいぶ )研究したものと見えて、条理が 明晰 ( めいせき )で秩序が整然として立派な説であった。 気の毒ながらうちの主人などは到底これを 反駁 ( はんばく )するほどの頭脳も学問もないのである。 しかし自分が胃病で苦しんでいる 際 ( さい )だから、何とかかんとか弁解をして自己の面目を保とうと思った者と見えて、「君の説は面白いが、あのカーライルは胃弱だったぜ」とあたかもカーライルが胃弱だから自分の胃弱も名誉であると云ったような、見当違いの挨拶をした。 すると友人は「カーライルが胃弱だって、胃弱の病人が必ずカーライルにはなれないさ」と 極 ( き )め付けたので主人は 黙然 ( もくねん )としていた。 かくのごとく虚栄心に富んでいるものの実際はやはり胃弱でない方がいいと見えて、今夜から晩酌を始めるなどというのはちょっと滑稽だ。 考えて見ると今朝 雑煮 ( ぞうに )をあんなにたくさん食ったのも 昨夜 ( ゆうべ )寒月君と正宗をひっくり返した影響かも知れない。 吾輩もちょっと雑煮が食って見たくなった。 吾輩は猫ではあるが大抵のものは食う。 車屋の黒のように横丁の 肴屋 ( さかなや )まで遠征をする気力はないし、 新道 ( しんみち )の 二絃琴 ( にげんきん )の師匠の 所 ( とこ )の 三毛 ( みけ )のように 贅沢 ( ぜいたく )は無論云える身分でない。 従って存外 嫌 ( きらい )は少ない方だ。 小供の食いこぼした 麺麭 ( パン )も食うし、餅菓子の ( あん )もなめる。 香 ( こう )の 物 ( もの )はすこぶるまずいが経験のため 沢庵 ( たくあん )を二切ばかりやった事がある。 食って見ると妙なもので、大抵のものは食える。 あれは 嫌 ( いや )だ、これは嫌だと云うのは 贅沢 ( ぜいたく )な我儘で到底教師の 家 ( うち )にいる猫などの口にすべきところでない。 主人の話しによると 仏蘭西 ( フランス )にバルザックという小説家があったそうだ。 バルザックが或る日自分の書いている小説中の人間の名をつけようと思っていろいろつけて見たが、どうしても気に入らない。 ところへ友人が遊びに来たのでいっしょに散歩に出掛けた。 友人は 固 ( もと )より 何 ( なんに )も知らずに連れ出されたのであるが、バルザックは 兼 ( か )ねて自分の苦心している名を 目付 ( めつけ )ようという考えだから往来へ出ると何もしないで店先の看板ばかり見て 歩行 ( ある )いている。 ところがやはり気に入った名がない。 友人を連れて 無暗 ( むやみ )にあるく。 友人は訳がわからずにくっ付いて行く。 彼等はついに朝から晩まで 巴理 ( パリ )を探険した。 その帰りがけにバルザックはふとある裁縫屋の看板が目についた。 見るとその看板にマーカスという名がかいてある。 バルザックは手を 拍 ( う )って「これだこれだこれに限る。 マーカスは好い名じゃないか。 マーカスの上へZという頭文字をつける、すると申し 分 ( ぶん )のない名が出来る。 Zでなくてはいかん。 Marcus は実にうまい。 どうも自分で作った名はうまくつけたつもりでも何となく 故意 ( わざ )とらしいところがあって面白くない。 ようやくの事で気に入った名が出来た」と友人の迷惑はまるで忘れて、一人嬉しがったというが、小説中の人間の名前をつけるに 一日 ( いちんち ) 巴理 ( パリ )を探険しなくてはならぬようでは随分 手数 ( てすう )のかかる話だ。 贅沢もこのくらい出来れば結構なものだが吾輩のように 牡蠣的 ( かきてき )主人を持つ身の上ではとてもそんな気は出ない。 何でもいい、食えさえすれば、という気になるのも境遇のしからしむるところであろう。 だから今 雑煮 ( ぞうに )が食いたくなったのも決して贅沢の結果ではない、何でも食える時に食っておこうという考から、主人の食い 剰 ( あま )した雑煮がもしや台所に残っていはすまいかと思い出したからである。 ……台所へ廻って見る。 今朝見た通りの餅が、今朝見た通りの色で椀の底に 膠着 ( こうちゃく )している。 白状するが餅というものは今まで一 辺 ( ぺん )も口に入れた事がない。 見るとうまそうにもあるし、また少しは 気味 ( きび )がわるくもある。 前足で上にかかっている菜っ葉を 掻 ( か )き寄せる。 爪を見ると餅の 上皮 ( うわかわ )が引き掛ってねばねばする。 嗅 ( か )いで見ると釜の底の飯を 御櫃 ( おはち )へ移す時のような 香 ( におい )がする。 食おうかな、やめようかな、とあたりを見廻す。 幸か不幸か誰もいない。 御三 ( おさん )は暮も春も同じような顔をして羽根をついている。 小供は奥座敷で「何とおっしゃる兎さん」を歌っている。 食うとすれば今だ。 もしこの機をはずすと来年までは餅というものの味を知らずに暮してしまわねばならぬ。 吾輩はこの 刹那 ( せつな )に猫ながら一の真理を感得した。 「得難き機会はすべての動物をして、好まざる事をも敢てせしむ」吾輩は実を云うとそんなに雑煮を食いたくはないのである。 否 椀底 ( わんてい )の様子を熟視すればするほど 気味 ( きび )が悪くなって、食うのが厭になったのである。 この時もし御三でも勝手口を開けたなら、奥の小供の足音がこちらへ近付くのを聞き得たなら、吾輩は 惜気 ( おしげ )もなく椀を見棄てたろう、しかも雑煮の事は来年まで念頭に浮ばなかったろう。 ところが誰も来ない、いくら 躇 ( ちゅうちょ )していても誰も来ない。 早く食わぬか食わぬかと催促されるような心持がする。 吾輩は椀の中を 覗 ( のぞ )き込みながら、早く誰か来てくれればいいと念じた。 やはり誰も来てくれない。 吾輩はとうとう雑煮を食わなければならぬ。 最後にからだ全体の重量を椀の底へ落すようにして、あぐりと餅の角を 一寸 ( いっすん )ばかり食い込んだ。 このくらい力を込めて食い付いたのだから、大抵なものなら 噛 ( か )み切れる訳だが、驚いた! もうよかろうと思って歯を引こうとすると引けない。 もう一 辺 ( ぺん )噛み直そうとすると動きがとれない。 餅は魔物だなと 疳 ( かん )づいた時はすでに遅かった。 沼へでも落ちた人が足を抜こうと 焦慮 ( あせ )るたびにぶくぶく深く沈むように、噛めば噛むほど口が重くなる、歯が動かなくなる。 歯答えはあるが、歯答えがあるだけでどうしても始末をつける事が出来ない。 美学者迷亭先生がかつて吾輩の主人を評して君は割り切れない男だといった事があるが、なるほどうまい事をいったものだ。 この餅も主人と同じようにどうしても割り切れない。 噛んでも噛んでも、三で十を割るごとく 尽未来際方 ( じんみらいざいかた )のつく 期 ( ご )はあるまいと思われた。 この 煩悶 ( はんもん )の際吾輩は覚えず第二の真理に 逢着 ( ほうちゃく )した。 「すべての動物は直覚的に事物の適不適を予知す」真理はすでに二つまで発明したが、餅がくっ付いているので 毫 ( ごう )も愉快を感じない。 歯が餅の肉に吸収されて、抜けるように痛い。 早く食い切って逃げないと 御三 ( おさん )が来る。 小供の唱歌もやんだようだ、きっと台所へ 馳 ( か )け出して来るに相違ない。 煩悶の 極 ( きょく ) 尻尾 ( しっぽ )をぐるぐる振って見たが何等の功能もない、耳を立てたり寝かしたりしたが駄目である。 考えて見ると耳と 尻尾 ( しっぽ )は餅と何等の関係もない。 要するに振り損の、立て損の、寝かし損であると気が付いたからやめにした。 ようやくの事これは前足の助けを借りて餅を払い落すに限ると考え付いた。 まず右の方をあげて口の周囲を 撫 ( な )で廻す。 撫 ( な )でたくらいで割り切れる訳のものではない。 今度は 左 ( ひだ )りの方を 伸 ( のば )して口を中心として急劇に円を 劃 ( かく )して見る。 そんな 呪 ( まじな )いで魔は落ちない。 辛防 ( しんぼう )が 肝心 ( かんじん )だと思って左右 交 ( かわ )る 交 ( がわ )るに動かしたがやはり依然として歯は餅の中にぶら下っている。 ええ面倒だと両足を一度に使う。 すると不思議な事にこの時だけは 後足 ( あとあし )二本で立つ事が出来た。 何だか猫でないような感じがする。 猫であろうが、あるまいがこうなった日にゃあ構うものか、何でも餅の魔が落ちるまでやるべしという意気込みで無茶苦茶に顔中引っ 掻 ( か )き廻す。 前足の運動が猛烈なのでややともすると中心を失って倒れかかる。 倒れかかるたびに後足で調子をとらなくてはならぬから、一つ所にいる訳にも行かんので、台所中あちら、こちらと飛んで廻る。 我ながらよくこんなに器用に 起 ( た )っていられたものだと思う。 第三の真理が 驀地 ( ばくち )に 現前 ( げんぜん )する。 「危きに 臨 ( のぞ )めば平常なし 能 ( あた )わざるところのものを 為 ( な )し能う。 之 ( これ )を 天祐 ( てんゆう )という」 幸 ( さいわい )に天祐を 享 ( う )けたる吾輩が一生懸命餅の魔と戦っていると、何だか足音がして奥より人が来るような 気合 ( けわい )である。 ここで人に来られては大変だと思って、いよいよ 躍起 ( やっき )となって台所をかけ廻る。 足音はだんだん近付いてくる。 ああ残念だが天祐が少し足りない。 とうとう小供に見付けられた。 「あら猫が御雑煮を食べて踊を踊っている」と大きな声をする。 この声を第一に聞きつけたのが御三である。 羽根も羽子板も打ち 遣 ( や )って勝手から「あらまあ」と飛込んで来る。 細君は 縮緬 ( ちりめん )の紋付で「いやな猫ねえ」と仰せられる。 主人さえ書斎から出て来て「この馬鹿野郎」といった。 面白い面白いと云うのは小供ばかりである。 そうしてみんな申し合せたようにげらげら笑っている。 腹は立つ、苦しくはある、踊はやめる訳にゆかぬ、弱った。 ようやく笑いがやみそうになったら、五つになる女の子が「御かあ様、猫も随分ね」といったので 狂瀾 ( きょうらん )を 既倒 ( きとう )に何とかするという勢でまた大変笑われた。 人間の同情に乏しい実行も 大分 ( だいぶ ) 見聞 ( けんもん )したが、この時ほど 恨 ( うら )めしく感じた事はなかった。 ついに天祐もどっかへ消え 失 ( う )せて、在来の通り 四 ( よ )つ 這 ( ばい )になって、眼を白黒するの醜態を演ずるまでに閉口した。 さすが見殺しにするのも気の毒と見えて「まあ餅をとってやれ」と主人が御三に命ずる。 御三はもっと踊らせようじゃありませんかという眼付で細君を見る。 細君は踊は見たいが、殺してまで見る気はないのでだまっている。 「取ってやらんと死んでしまう、早くとってやれ」と主人は再び下女を 顧 ( かえり )みる。 御三 ( おさん )は御馳走を半分食べかけて夢から起された時のように、気のない顔をして餅をつかんでぐいと引く。 寒月 ( かんげつ )君じゃないが前歯がみんな折れるかと思った。 どうも痛いの痛くないのって、餅の中へ堅く食い込んでいる歯を 情 ( なさ )け容赦もなく引張るのだからたまらない。 吾輩が「すべての安楽は困苦を通過せざるべからず」と云う第四の真理を経験して、けろけろとあたりを見廻した時には、家人はすでに奥座敷へ 這入 ( はい )ってしまっておった。 こんな失敗をした時には内にいて御三なんぞに顔を見られるのも何となくばつが悪い。 いっその事気を 易 ( か )えて新道の 二絃琴 ( にげんきん )の御師匠さんの 所 ( とこ )の 三毛子 ( みけこ )でも訪問しようと台所から裏へ出た。 三毛子はこの近辺で有名な 美貌家 ( びぼうか )である。 吾輩は猫には相違ないが物の 情 ( なさ )けは一通り心得ている。 うちで主人の 苦 ( にが )い顔を見たり、御三の 険突 ( けんつく )を食って気分が 勝 ( すぐ )れん時は必ずこの異性の 朋友 ( ほうゆう )の 許 ( もと )を訪問していろいろな話をする。 すると、いつの 間 ( ま )にか心が 晴々 ( せいせい )して今までの心配も苦労も何もかも忘れて、生れ変ったような心持になる。 女性の影響というものは実に 莫大 ( ばくだい )なものだ。 杉垣の隙から、いるかなと思って見渡すと、三毛子は正月だから首輪の新しいのをして行儀よく 椽側 ( えんがわ )に坐っている。 その背中の丸さ加減が言うに言われんほど美しい。 曲線の美を尽している。 尻尾 ( しっぽ )の曲がり加減、足の折り具合、 物憂 ( ものう )げに耳をちょいちょい振る 景色 ( けしき )なども 到底 ( とうてい )形容が出来ん。 ことによく日の当る所に暖かそうに、 品 ( ひん )よく 控 ( ひか )えているものだから、身体は静粛端正の態度を有するにも関らず、 天鵞毛 ( びろうど )を 欺 ( あざむ )くほどの 滑 ( なめ )らかな満身の毛は春の光りを反射して風なきにむらむらと微動するごとくに思われる。 吾輩はしばらく 恍惚 ( こうこつ )として 眺 ( なが )めていたが、やがて我に帰ると同時に、低い声で「三毛子さん三毛子さん」といいながら前足で招いた。 三毛子は「あら先生」と椽を下りる。 赤い首輪につけた鈴がちゃらちゃらと鳴る。 おや正月になったら鈴までつけたな、どうもいい 音 ( ね )だと感心している 間 ( ま )に、吾輩の 傍 ( そば )に来て「あら先生、おめでとう」と尾を 左 ( ひだ )りへ振る。 吾等 猫属 ( ねこぞく )間で御互に挨拶をするときには尾を棒のごとく立てて、それを左りへぐるりと廻すのである。 町内で吾輩を先生と呼んでくれるのはこの三毛子ばかりである。 吾輩は前回断わった通りまだ名はないのであるが、教師の 家 ( うち )にいるものだから三毛子だけは尊敬して先生先生といってくれる。 吾輩も先生と云われて 満更 ( まんざら )悪い心持ちもしないから、はいはいと返事をしている。 「やあおめでとう、大層立派に御化粧が出来ましたね」「ええ去年の暮 御師匠 ( おししょう )さんに買って頂いたの、 宜 ( い )いでしょう」とちゃらちゃら鳴らして見せる。 「なるほど善い 音 ( ね )ですな、吾輩などは生れてから、そんな立派なものは見た事がないですよ」「あらいやだ、みんなぶら下げるのよ」とまたちゃらちゃら鳴らす。 「いい 音 ( ね )でしょう、あたし嬉しいわ」とちゃらちゃらちゃらちゃら続け様に鳴らす。 「あなたのうちの御師匠さんは大変あなたを可愛がっていると見えますね」と吾身に引きくらべて 暗 ( あん )に 欣羨 ( きんせん )の意を 洩 ( も )らす。 三毛子は無邪気なものである「ほんとよ、まるで自分の小供のようよ」とあどけなく笑う。 猫だって笑わないとは限らない。 人間は自分よりほかに笑えるものが無いように思っているのは間違いである。 吾輩が笑うのは鼻の 孔 ( あな )を三角にして 咽喉仏 ( のどぼとけ )を震動させて笑うのだから人間にはわからぬはずである。 「一体あなたの 所 ( とこ )の御主人は何ですか」「あら御主人だって、妙なのね。 御師匠 ( おししょう )さんだわ。 二絃琴 ( にげんきん )の御師匠さんよ」「それは吾輩も知っていますがね。 その御身分は何なんです。 いずれ 昔 ( むか )しは立派な方なんでしょうな」「ええ」 君を待つ 間 ( ま )の姫小松…………… 障子の内で御師匠さんが二絃琴を 弾 ( ひ )き出す。 「 宜 ( い )い声でしょう」と三毛子は自慢する。 「 宜 ( い )いようだが、吾輩にはよくわからん。 全体何というものですか」「あれ? あれは何とかってものよ。 御師匠さんはあれが大好きなの。 ……御師匠さんはあれで六十二よ。 随分丈夫だわね」六十二で生きているくらいだから丈夫と云わねばなるまい。 吾輩は「はあ」と返事をした。 少し 間 ( ま )が抜けたようだが別に名答も出て来なかったから仕方がない。 「あれでも、もとは身分が大変好かったんだって。 いつでもそうおっしゃるの」「へえ元は何だったんです」「何でも 天璋院 ( てんしょういん )様の 御祐筆 ( ごゆうひつ )の妹の御嫁に行った 先 ( さ )きの 御 ( お )っかさんの 甥 ( おい )の娘なんだって」「何ですって?」「あの天璋院様の御祐筆の妹の御嫁にいった……」「なるほど。 少し待って下さい。 天璋院様の妹の御祐筆の……」「あらそうじゃないの、天璋院様の御祐筆の妹の……」「よろしい分りました天璋院様のでしょう」「ええ」「御祐筆のでしょう」「そうよ」「御嫁に行った」「妹の御嫁に行ったですよ」「そうそう間違った。 妹の御嫁に 入 ( い )った先きの」「御っかさんの甥の娘なんですとさ」「御っかさんの甥の娘なんですか」「ええ。 分ったでしょう」「いいえ。 何だか混雑して要領を得ないですよ。 詰 ( つま )るところ天璋院様の何になるんですか」「あなたもよっぽど分らないのね。 だから天璋院様の御祐筆の妹の御嫁に行った先きの御っかさんの甥の娘なんだって、 先 ( さ )っきっから言ってるんじゃありませんか」「それはすっかり分っているんですがね」「それが分りさえすればいいんでしょう」「ええ」と仕方がないから降参をした。 吾々は時とすると理詰の 虚言 ( うそ )を 吐 ( つ )かねばならぬ事がある。 障子の 中 ( うち )で二絃琴の 音 ( ね )がぱったりやむと、御師匠さんの声で「三毛や三毛や御飯だよ」と呼ぶ。 三毛子は嬉しそうに「あら御師匠さんが呼んでいらっしゃるから、 私 ( あた )し帰るわ、よくって?」わるいと云ったって仕方がない。 「それじゃまた遊びにいらっしゃい」と鈴をちゃらちゃら鳴らして庭先までかけて行ったが急に戻って来て「あなた大変色が悪くってよ。 どうかしやしなくって」と心配そうに問いかける。 まさか 雑煮 ( ぞうに )を食って踊りを踊ったとも云われないから「何別段の事もありませんが、少し考え事をしたら頭痛がしてね。 あなたと話しでもしたら直るだろうと思って実は出掛けて来たのですよ」「そう。 御大事になさいまし。 さようなら」少しは 名残 ( なご )り惜し気に見えた。 これで雑煮の元気もさっぱりと回復した。 いい心持になった。 帰りに例の 茶園 ( ちゃえん )を通り抜けようと思って 霜柱 ( しもばしら )の 融 ( と )けかかったのを踏みつけながら 建仁寺 ( けんにんじ )の 崩 ( くず )れから顔を出すとまた車屋の黒が枯菊の上に 背 ( せ )を山にして 欠伸 ( あくび )をしている。 近頃は黒を見て恐怖するような吾輩ではないが、話しをされると面倒だから知らぬ顔をして行き過ぎようとした。 黒の性質として 他 ( ひと )が 己 ( おの )れを 軽侮 ( けいぶ )したと認むるや否や決して黙っていない。 「おい、名なしの 権兵衛 ( ごんべえ )、近頃じゃ 乙 ( おつ )う高く留ってるじゃあねえか。 いくら教師の飯を食ったって、そんな高慢ちきな 面 ( つ )らあするねえ。 人 ( ひと )つけ面白くもねえ」黒は吾輩の有名になったのを、まだ知らんと見える。 説明してやりたいが 到底 ( とうてい )分る奴ではないから、まず一応の挨拶をして出来得る限り早く 御免蒙 ( ごめんこうむ )るに 若 ( し )くはないと決心した。 「いや黒君おめでとう。 不相変 ( あいかわらず )元気がいいね」と 尻尾 ( しっぽ )を立てて左へくるりと廻わす。 黒は尻尾を立てたぎり挨拶もしない。 「何おめでてえ? 正月でおめでたけりゃ、御めえなんざあ年が年中おめでてえ方だろう。 気をつけろい、この 吹 ( ふ )い 子 ( ご )の 向 ( むこ )う 面 ( づら )め」吹い子の向うづらという句は 罵詈 ( ばり )の言語であるようだが、吾輩には了解が出来なかった。 「ちょっと 伺 ( うか )がうが吹い子の向うづらと云うのはどう云う意味かね」「へん、手めえが 悪体 ( あくたい )をつかれてる癖に、その 訳 ( わけ )を聞きゃ世話あねえ、だから正月野郎だって事よ」正月野郎は詩的であるが、その意味に至ると吹い子の何とかよりも一層不明瞭な文句である。 参考のためちょっと聞いておきたいが、聞いたって明瞭な答弁は得られぬに 極 ( き )まっているから、 面 ( めん )と 対 ( むか )ったまま無言で立っておった。 いささか手持無沙汰の 体 ( てい )である。 すると突然黒のうちの 神 ( かみ )さんが大きな声を張り揚げて「おや棚へ上げて置いた 鮭 ( しゃけ )がない。 大変だ。 またあの黒の 畜生 ( ちきしょう )が取ったんだよ。 ほんとに憎らしい猫だっちゃありゃあしない。 今に帰って来たら、どうするか見ていやがれ」と 怒鳴 ( どな )る。 初春 ( はつはる )の 長閑 ( のどか )な空気を無遠慮に震動させて、枝を鳴らさぬ君が 御代 ( みよ )を 大 ( おおい )に 俗了 ( ぞくりょう )してしまう。 黒は怒鳴るなら、怒鳴りたいだけ怒鳴っていろと云わぬばかりに横着な顔をして、四角な 顋 ( あご )を前へ出しながら、あれを聞いたかと合図をする。 今までは黒との応対で気がつかなかったが、見ると彼の足の下には一切れ二銭三厘に相当する鮭の骨が泥だらけになって転がっている。 「君 不相変 ( あいかわらず )やってるな」と今までの行き掛りは忘れて、つい感投詞を奉呈した。 黒はそのくらいな事ではなかなか機嫌を直さない。 「何がやってるでえ、この野郎。 しゃけの一切や二切で相変らずたあ何だ。 人を 見縊 ( みく )びった事をいうねえ。 憚 ( はばか )りながら車屋の黒だあ」と腕まくりの代りに右の前足を 逆 ( さ )かに肩の 辺 ( へん )まで 掻 ( か )き上げた。 「君が黒君だと云う事は、始めから知ってるさ」「知ってるのに、相変らずやってるたあ何だ。 何だてえ事よ」と熱いのを 頻 ( しき )りに吹き懸ける。 人間なら 胸倉 ( むなぐら )をとられて小突き廻されるところである。 少々 辟易 ( へきえき )して内心困った事になったなと思っていると、再び例の神さんの大声が聞える。 「ちょいと西川さん、おい西川さんてば、用があるんだよこの人あ。 牛肉を一 斤 ( きん )すぐ持って来るんだよ。 いいかい、分ったかい、牛肉の堅くないところを一斤だよ」と牛肉注文の声が 四隣 ( しりん )の 寂寞 ( せきばく )を破る。 「へん年に一遍牛肉を 誂 ( あつら )えると思って、いやに大きな声を出しゃあがらあ。 牛肉一斤が隣り近所へ自慢なんだから始末に終えねえ 阿魔 ( あま )だ」と黒は 嘲 ( あざけ )りながら四つ足を 踏張 ( ふんば )る。 吾輩は挨拶のしようもないから黙って見ている。 「一斤くらいじゃあ、承知が出来ねえんだが、仕方がねえ、いいから取っときゃ、今に食ってやらあ」と自分のために 誂 ( あつら )えたもののごとくいう。 「今度は本当の御馳走だ。 結構結構」と吾輩はなるべく彼を帰そうとする。 「御めっちの知った事じゃねえ。 黙っていろ。 うるせえや」と云いながら突然 後足 ( あとあし )で 霜柱 ( しもばしら )の 崩 ( くず )れた奴を吾輩の頭へばさりと 浴 ( あ )びせ掛ける。 吾輩が驚ろいて、からだの泥を払っている 間 ( ま )に黒は垣根を 潜 ( くぐ )って、どこかへ姿を隠した。 大方西川の 牛 ( ぎゅう )を 覘 ( ねらい )に行ったものであろう。 家 ( うち )へ帰ると座敷の中が、いつになく春めいて主人の笑い声さえ陽気に聞える。 はてなと明け放した椽側から 上 ( あが )って主人の 傍 ( そば )へ寄って見ると見馴れぬ客が来ている。 頭を奇麗に分けて、 木綿 ( もめん )の紋付の羽織に 小倉 ( こくら )の 袴 ( はかま )を着けて 至極 ( しごく )真面目そうな 書生体 ( しょせいてい )の男である。 主人の手あぶりの角を見ると 春慶塗 ( しゅんけいぬ )りの 巻煙草 ( まきたばこ )入れと並んで 越智東風君 ( おちとうふうくん )を紹介致 候 ( そろ )水島寒月という名刺があるので、この客の名前も、寒月君の友人であるという事も知れた。 主客 ( しゅかく )の対話は途中からであるから前後がよく分らんが、何でも吾輩が前回に紹介した美学者迷亭君の事に関しているらしい。 「それで面白い趣向があるから是非いっしょに来いとおっしゃるので」と客は落ちついて云う。 「何ですか、その西洋料理へ行って 午飯 ( ひるめし )を食うのについて趣向があるというのですか」と主人は茶を 続 ( つ )ぎ足して客の前へ押しやる。 「さあ、その趣向というのが、その時は私にも分らなかったんですが、いずれあの 方 ( かた )の事ですから、何か面白い種があるのだろうと思いまして……」「いっしょに行きましたか、なるほど」「ところが驚いたのです」主人はそれ見たかと云わぬばかりに、 膝 ( ひざ )の上に乗った吾輩の頭をぽかと 叩 ( たた )く。 少し痛い。 「また馬鹿な茶番見たような事なんでしょう。 あの男はあれが癖でね」と急にアンドレア・デル・サルト事件を思い出す。 「へへー。 大方これから行くつもりのところを、過去に見立てた 洒落 ( しゃれ )なんでしょう」と主人は自分ながらうまい事を言ったつもりで誘い出し笑をする。 客はさまで感服した様子もない。 「そうですか、私はまたいつの 間 ( ま )に洋行なさったかと思って、つい真面目に拝聴していました。 それに見て来たように なめくじのソップの御話や 蛙 ( かえる )のシチュの形容をなさるものですから」「そりゃ誰かに聞いたんでしょう、うそをつく事はなかなか名人ですからね」「どうもそうのようで」と 花瓶 ( かびん )の水仙を眺める。 少しく残念の 気色 ( けしき )にも取られる。 「じゃ趣向というのは、それなんですね」と主人が念を押す。 「いえそれはほんの冒頭なので、本論はこれからなのです」「ふーん」と主人は好奇的な感投詞を 挟 ( はさ )む。 「それから、とても なめくじや蛙は食おうっても食えやしないから、まあ トチメンボーくらいなところで負けとく事にしようじゃないか君と御相談なさるものですから、私はつい何の気なしに、それがいいでしょう、といってしまったので」「へー、とちめんぼうは妙ですな」「ええ全く妙なのですが、先生があまり真面目だものですから、つい気がつきませんでした」とあたかも主人に向って 麁忽 ( そこつ )を 詫 ( わ )びているように見える。 「それからどうしました」と主人は無頓着に聞く。 客の謝罪には一向同情を表しておらん。 「それからボイにおい トチメンボーを 二人前 ( ににんまえ )持って来いというと、ボイが メンチボーですかと聞き直しましたが、先生はますます 真面目 ( まじめ )な 貌 ( かお )で メンチボーじゃない トチメンボーだと訂正されました」「なある。 その トチメンボーという料理は一体あるんですか」「さあ私も少しおかしいとは思いましたがいかにも先生が沈着であるし、その上あの通りの西洋通でいらっしゃるし、ことにその時は洋行なすったものと信じ切っていたものですから、私も口を添えて トチメンボーだ トチメンボーだとボイに教えてやりました」「ボイはどうしました」「ボイがね、今考えると実に 滑稽 ( こっけい )なんですがね、しばらく思案していましてね、はなはだ御気の毒様ですが今日は トチメンボーは 御生憎様 ( おあいにくさま )で メンチボーなら 御二人前 ( おふたりまえ )すぐに出来ますと云うと、先生は非常に残念な様子で、それじゃせっかくここまで来た 甲斐 ( かい )がない。 どうか トチメンボーを 都合 ( つごう )して食わせてもらう 訳 ( わけ )には行くまいかと、ボイに二十銭銀貨をやられると、ボイはそれではともかくも料理番と相談して参りましょうと奥へ行きましたよ」「大変 トチメンボーが食いたかったと見えますね」「しばらくしてボイが出て来て 真 ( まこと )に御生憎で、 御誂 ( おあつらえ )ならこしらえますが少々時間がかかります、と云うと迷亭先生は落ちついたもので、どうせ我々は正月でひまなんだから、少し待って食って行こうじゃないかと云いながらポッケットから葉巻を出してぷかりぷかり吹かし始められたので、 私 ( わたく )しも仕方がないから、 懐 ( ふところ )から日本新聞を出して読み出しました、するとボイはまた奥へ相談に行きましたよ」「いやに 手数 ( てすう )が掛りますな」と主人は戦争の通信を読むくらいの意気込で席を 前 ( すす )める。 「するとボイがまた出て来て、近頃は トチメンボーの材料が払底で亀屋へ行っても横浜の十五番へ行っても買われませんから当分の間は御生憎様でと気の毒そうに云うと、先生はそりゃ困ったな、せっかく来たのになあと私の方を御覧になってしきりに繰り返さるるので、私も黙っている訳にも参りませんから、どうも 遺憾 ( いかん )ですな、遺憾 極 ( きわま )るですなと調子を合せたのです」「ごもっともで」と主人が賛成する。 何がごもっともだか吾輩にはわからん。 「するとボイも気の毒だと見えて、その内材料が参りましたら、どうか願いますってんでしょう。 先生が材料は何を使うかねと問われるとボイはへへへへと笑って返事をしないんです。 材料は日本派の俳人だろうと先生が押し返して聞くとボイはへえさようで、それだものだから近頃は横浜へ行っても買われませんので、まことにお気の毒様と云いましたよ」「アハハハそれが落ちなんですか、こりゃ面白い」と主人はいつになく大きな声で笑う。 膝 ( ひざ )が揺れて吾輩は落ちかかる。 主人はそれにも 頓着 ( とんじゃく )なく笑う。 アンドレア・デル・サルトに 罹 ( かか )ったのは自分一人でないと云う事を知ったので急に愉快になったものと見える。 「それから二人で表へ出ると、どうだ君うまく行ったろう、 橡面坊 ( とちめんぼう )を種に使ったところが面白かろうと大得意なんです。 敬服の至りですと云って御別れしたようなものの実は 午飯 ( ひるめし )の時刻が延びたので大変空腹になって弱りましたよ」「それは御迷惑でしたろう」と主人は始めて同情を表する。 これには吾輩も異存はない。 しばらく話しが途切れて吾輩の 咽喉 ( のど )を鳴らす音が 主客 ( しゅかく )の耳に入る。 東風君は冷めたくなった茶をぐっと飲み干して「実は今日参りましたのは、少々先生に御願があって参ったので」と改まる。 「はあ、何か御用で」と主人も負けずに 済 ( す )ます。 「御承知の通り、文学美術が好きなものですから……」「結構で」と油を 注 ( さ )す。 「同志だけがよりましてせんだってから朗読会というのを組織しまして、毎月一回会合してこの方面の研究をこれから続けたいつもりで、すでに第一回は去年の暮に開いたくらいであります」「ちょっと伺っておきますが、朗読会と云うと何か 節奏 ( ふし )でも附けて、 詩歌 ( しいか )文章の 類 ( るい )を読むように聞えますが、一体どんな風にやるんです」「まあ初めは古人の作からはじめて、 追々 ( おいおい )は同人の創作なんかもやるつもりです」「古人の作というと 白楽天 ( はくらくてん )の 琵琶行 ( びわこう )のようなものででもあるんですか」「いいえ」「 蕪村 ( ぶそん )の 春風馬堤曲 ( しゅんぷうばていきょく )の種類ですか」「いいえ」「それじゃ、どんなものをやったんです」「せんだっては近松の 心中物 ( しんじゅうもの )をやりました」「近松? あの 浄瑠璃 ( じょうるり )の近松ですか」近松に二人はない。 近松といえば戯曲家の近松に 極 ( きま )っている。 それを聞き直す主人はよほど 愚 ( ぐ )だと思っていると、主人は何にも分らずに吾輩の頭を 叮嚀 ( ていねい )に 撫 ( な )でている。 藪睨 ( やぶにら )みから 惚 ( ほ )れられたと自認している人間もある世の中だからこのくらいの 誤謬 ( ごびゅう )は決して驚くに足らんと撫でらるるがままにすましていた。 「ええ」と答えて 東風子 ( とうふうし )は主人の顔色を 窺 ( うかが )う。 「それじゃ一人で朗読するのですか、または役割を 極 ( き )めてやるんですか」「役を極めて 懸合 ( かけあい )でやって見ました。 その主意はなるべく作中の人物に同情を持ってその性格を発揮するのを第一として、それに手真似や身振りを添えます。 白 ( せりふ )はなるべくその時代の人を写し出すのが主で、御嬢さんでも 丁稚 ( でっち )でも、その人物が出てきたようにやるんです」「じゃ、まあ芝居見たようなものじゃありませんか」「ええ 衣装 ( いしょう )と 書割 ( かきわり )がないくらいなものですな」「失礼ながらうまく行きますか」「まあ第一回としては成功した方だと思います」「それでこの前やったとおっしゃる心中物というと」「その、船頭が御客を乗せて 芳原 ( よしわら )へ行く 所 ( とこ )なんで」「大変な幕をやりましたな」と教師だけにちょっと首を 傾 ( かたむ )ける。 鼻から吹き出した 日の出の煙りが耳を 掠 ( かす )めて顔の横手へ廻る。 「なあに、そんなに大変な事もないんです。 登場の人物は御客と、船頭と、 花魁 ( おいらん )と 仲居 ( なかい )と 遣手 ( やりて )と 見番 ( けんばん )だけですから」と東風子は平気なものである。 主人は花魁という名をきいてちょっと 苦 ( にが )い顔をしたが、仲居、遣手、見番という術語について明瞭の智識がなかったと見えてまず質問を呈出した。 「仲居というのは 娼家 ( しょうか )の 下婢 ( かひ )にあたるものですかな」「まだよく研究はして見ませんが仲居は茶屋の下女で、遣手というのが 女部屋 ( おんなべや )の 助役 ( じょやく )見たようなものだろうと思います」東風子はさっき、その人物が出て来るように 仮色 ( こわいろ )を使うと云った癖に遣手や仲居の性格をよく解しておらんらしい。 「なるほど仲居は茶屋に 隷属 ( れいぞく )するもので、遣手は娼家に 起臥 ( きが )する者ですね。 次に 見番と云うのは人間ですかまたは一定の場所を 指 ( さ )すのですか、もし人間とすれば男ですか女ですか」「見番は何でも男の人間だと思います」「何を 司 ( つかさ )どっているんですかな」「さあそこまではまだ調べが届いておりません。 その内調べて見ましょう」これで懸合をやった日には 頓珍漢 ( とんちんかん )なものが出来るだろうと吾輩は主人の顔をちょっと見上げた。 主人は存外真面目である。 「それで朗読家は君のほかにどんな人が加わったんですか」「いろいろおりました。 花魁が法学士のK君でしたが、 口髯 ( くちひげ )を生やして、女の甘ったるいせりふを 使 ( つ )かうのですからちょっと妙でした。 それにその花魁が 癪 ( しゃく )を起すところがあるので……」「朗読でも癪を起さなくっちゃ、いけないんですか」と主人は心配そうに尋ねる。 「ええとにかく表情が大事ですから」と東風子はどこまでも文芸家の気でいる。 「うまく癪が起りましたか」と主人は警句を吐く。 「癪だけは第一回には、ちと無理でした」と東風子も警句を吐く。 「ところで君は何の役割でした」と主人が聞く。 「 私 ( わたく )しは船頭」「へー、君が船頭」君にして船頭が 務 ( つと )まるものなら僕にも見番くらいはやれると云ったような語気を 洩 ( も )らす。 やがて「船頭は無理でしたか」と御世辞のないところを打ち明ける。 東風子は別段癪に障った様子もない。 やはり沈着な口調で「その船頭でせっかくの催しも 竜頭蛇尾 ( りゅうとうだび )に終りました。 実は会場の隣りに女学生が四五人下宿していましてね、それがどうして聞いたものか、その日は朗読会があるという事を、どこかで探知して会場の窓下へ来て傍聴していたものと見えます。 私 ( わたく )しが船頭の 仮色 ( こわいろ )を使って、ようやく調子づいてこれなら大丈夫と思って得意にやっていると、……つまり身振りがあまり過ぎたのでしょう、今まで 耐 ( こ )らえていた女学生が一度にわっと笑いだしたものですから、驚ろいた事も驚ろいたし、 極 ( きま )りが 悪 ( わ )るい事も悪るいし、それで腰を折られてから、どうしても 後 ( あと )がつづけられないので、とうとうそれ 限 ( ぎ )りで散会しました」第一回としては成功だと称する朗読会がこれでは、失敗はどんなものだろうと想像すると笑わずにはいられない。 覚えず 咽喉仏 ( のどぼとけ )がごろごろ鳴る。 主人はいよいよ柔かに頭を 撫 ( な )でてくれる。 人を笑って可愛がられるのはありがたいが、いささか無気味なところもある。 「それは飛んだ事で」と主人は正月早々 弔詞 ( ちょうじ )を述べている。 「第二回からは、もっと奮発して盛大にやるつもりなので、今日出ましたのも全くそのためで、実は先生にも一つ御入会の上御尽力を仰ぎたいので」「僕にはとても癪なんか起せませんよ」と消極的の主人はすぐに断わりかける。 「いえ、癪などは起していただかんでもよろしいので、ここに賛助員の名簿が」と云いながら紫の風呂敷から大事そうに 小菊版 ( こぎくばん )の帳面を出す。 「これへどうか御署名の上 御捺印 ( ごなついん )を願いたいので」と帳面を主人の 膝 ( ひざ )の前へ開いたまま置く。 見ると現今知名な文学博士、文学士連中の名が行儀よく 勢揃 ( せいぞろい )をしている。 「はあ賛成員にならん事もありませんが、どんな義務があるのですか」と 牡蠣先生 ( かきせんせい )は 掛念 ( けねん )の 体 ( てい )に見える。 「義務と申して別段是非願う事もないくらいで、ただ御名前だけを御記入下さって賛成の意さえ 御表 ( おひょう )し 被下 ( くださ )ればそれで結構です」「そんなら 這入 ( はい )ります」と義務のかからぬ事を知るや否や主人は急に気軽になる。 責任さえないと云う事が分っておれば 謀叛 ( むほん )の連判状へでも名を書き入れますと云う顔付をする。 加之 ( のみならず )こう知名の学者が名前を 列 ( つら )ねている中に姓名だけでも入籍させるのは、今までこんな事に出合った事のない主人にとっては無上の光栄であるから返事の勢のあるのも無理はない。 「ちょっと失敬」と主人は書斎へ印をとりに這入る。 吾輩はぼたりと畳の上へ落ちる。 東風子は菓子皿の中の カステラをつまんで一口に 頬張 ( ほおば )る。 モゴモゴしばらくは苦しそうである。 吾輩は今朝の 雑煮 ( ぞうに )事件をちょっと思い出す。 主人が書斎から 印形 ( いんぎょう )を持って出て来た時は、東風子の胃の中にカステラが落ちついた時であった。 主人は菓子皿のカステラが 一切 ( ひときれ )足りなくなった事には気が着かぬらしい。 もし気がつくとすれば第一に疑われるものは吾輩であろう。 東風子が帰ってから、主人が書斎に入って机の上を見ると、いつの 間 ( ま )にか迷亭先生の手紙が来ている。 「新年の 御慶 ( ぎょけい ) 目出度 ( めでたく ) 申納候 ( もうしおさめそろ )。 ……」 いつになく出が真面目だと主人が思う。 迷亭先生の手紙に真面目なのはほとんどないので、この間などは「 其後 ( そのご )別に 恋着 ( れんちゃく )せる婦人も 無之 ( これなく )、いず 方 ( かた )より 艶書 ( えんしょ )も参らず、 先 ( ま )ず 先 ( ま )ず無事に消光 罷 ( まか )り在り 候 ( そろ )間、 乍憚 ( はばかりながら )御休心 可被下候 ( くださるべくそろ )」と云うのが来たくらいである。 それに 較 ( くら )べるとこの年始状は例外にも世間的である。 「彼等は食後必ず入浴 致候 ( いたしそろ )。 入浴後一種の方法によりて 浴前 ( よくぜん )に 嚥下 ( えんか )せるものを 悉 ( ことごと )く 嘔吐 ( おうと )し、胃内を掃除致し 候 ( そろ )。 胃内廓清 ( いないかくせい )の功を奏したる 後 ( のち )又食卓に 就 ( つ )き、 飽 ( あ )く迄珍味を 風好 ( ふうこう )し、風好し 了 ( おわ )れば又湯に入りて 之 ( これ )を 吐出 ( としゅつ ) 致候 ( いたしそろ )。 かくの如くすれば好物は 貪 ( むさ )ぼり次第貪り 候 ( そうろう )も 毫 ( ごう )も内臓の諸機関に障害を生ぜず、一挙両得とは此等の事を 可申 ( もうすべき )かと愚考 致候 ( いたしそろ )……」 なるほど一挙両得に相違ない。 主人は 羨 ( うらや )ましそうな顔をする。 「廿世紀の 今日 ( こんにち )交通の 頻繁 ( ひんぱん )、宴会の増加は申す迄もなく、軍国多事征露の第二年とも相成 候折柄 ( そろおりから )、吾人戦勝国の国民は、是非共 羅馬 ( ローマ )人に 傚 ( なら )って此入浴嘔吐の術を研究せざるべからざる機会に到着致し 候 ( そろ )事と自信 致候 ( いたしそろ )。 左 ( さ )もなくば 切角 ( せっかく )の大国民も近き将来に於て 悉 ( ことごと )く大兄の如く胃病患者と相成る事と 窃 ( ひそ )かに心痛 罷 ( まか )りあり 候 ( そろ )……」 また大兄のごとくか、 癪 ( しゃく )に 障 ( さわ )る男だと主人が思う。 「 依 ( よっ )て此間 中 ( じゅう )よりギボン、モンセン、スミス等諸家の著述を 渉猟 ( しょうりょう )致し 居候 ( おりそうら )えども 未 ( いま )だに発見の 端緒 ( たんしょ )をも 見出 ( みいだ )し得ざるは残念の至に 存候 ( ぞんじそろ )。 然し御存じの如く小生は一度思い立ち 候事 ( そろこと )は成功するまでは決して中絶 仕 ( つかまつ )らざる性質に候えば 嘔吐方 ( おうとほう )を再興致し 候 ( そろ )も遠からぬうちと信じ居り 候 ( そろ )次第。 右は発見次第御報道 可仕候 ( つかまつるべくそろ )につき、左様御承知 可被下候 ( くださるべくそろ )。 就 ( つい )てはさきに申上 候 ( そろ ) トチメンボー及び孔雀の舌の御馳走も 可相成 ( あいなるべく )は右発見後に致し 度 ( たく )、 左 ( さ )すれば小生の都合は 勿論 ( もちろん )、既に胃弱に悩み居らるる大兄の為にも 御便宜 ( ごべんぎ )かと 存候 ( ぞんじそろ )草々不備」 何だとうとう 担 ( かつ )がれたのか、あまり書き方が真面目だものだからつい 仕舞 ( しまい )まで本気にして読んでいた。 新年 匆々 ( そうそう )こんな 悪戯 ( いたずら )をやる迷亭はよっぽどひま人だなあと主人は笑いながら云った。 それから四五日は別段の事もなく過ぎ去った。 白磁 ( はくじ )の水仙がだんだん 凋 ( しぼ )んで、 青軸 ( あおじく )の梅が 瓶 ( びん )ながらだんだん開きかかるのを眺め暮らしてばかりいてもつまらんと思って、 一両度 ( いちりょうど )三毛子を訪問して見たが 逢 ( あ )われない。 最初は留守だと思ったが、二 返目 ( へんめ )には病気で寝ているという事が知れた。 障子の中で例の御師匠さんと下女が話しをしているのを 手水鉢 ( ちょうずばち )の葉蘭の影に隠れて聞いているとこうであった。 「三毛は御飯をたべるかい」「いいえ今朝からまだ 何 ( なん )にも食べません、あったかにして 御火燵 ( おこた )に寝かしておきました」何だか猫らしくない。 まるで人間の取扱を受けている。 一方では自分の境遇と比べて見て 羨 ( うらや )ましくもあるが、一方では 己 ( おの )が愛している猫がかくまで厚遇を受けていると思えば嬉しくもある。 「どうも困るね、御飯をたべないと、 身体 ( からだ )が疲れるばかりだからね」「そうでございますとも、私共でさえ一日 御 ( ごぜん )をいただかないと、明くる日はとても働けませんもの」 下女は自分より猫の方が上等な動物であるような返事をする。 実際この 家 ( うち )では下女より猫の方が大切かも知れない。 「御医者様へ連れて行ったのかい」「ええ、あの御医者はよっぽど妙でございますよ。 私が三毛をだいて診察場へ行くと、 風邪 ( かぜ )でも引いたのかって私の 脈 ( みゃく )をとろうとするんでしょう。 いえ病人は私ではございません。 これですって三毛を膝の上へ直したら、にやにや笑いながら、猫の病気はわしにも分らん、 抛 ( ほう )っておいたら今に 癒 ( なお )るだろうってんですもの、あんまり 苛 ( ひど )いじゃございませんか。 腹が立ったから、それじゃ見ていただかなくってもようございますこれでも大事の猫なんですって、三毛を 懐 ( ふところ )へ入れてさっさと帰って参りました」「ほんにねえ」 「ほんにねえ」は 到底 ( とうてい )吾輩のうちなどで聞かれる言葉ではない。 やはり 天璋院 ( てんしょういん )様の何とかの何とかでなくては使えない、はなはだ 雅 ( が )であると感心した。 「何だかしくしく云うようだが……」「ええきっと風邪を引いて 咽喉 ( のど )が痛むんでございますよ。 風邪を引くと、どなたでも 御咳 ( おせき )が出ますからね……」 天璋院様の何とかの何とかの下女だけに馬鹿 叮嚀 ( ていねい )な言葉を使う。 「それに近頃は肺病とか云うものが出来てのう」「ほんとにこの頃のように肺病だのペストだのって新しい病気ばかり 殖 ( ふ )えた日にゃ油断も隙もなりゃしませんのでございますよ」「旧幕時代に無い者に 碌 ( ろく )な者はないから御前も気をつけないといかんよ」「そうでございましょうかねえ」 下女は 大 ( おおい )に感動している。 「 風邪 ( かぜ )を引くといってもあまり出あるきもしないようだったに……」「いえね、あなた、それが近頃は悪い友達が出来ましてね」 下女は国事の秘密でも語る時のように大得意である。 「悪い友達?」「ええあの表通りの教師の 所 ( とこ )にいる薄ぎたない 雄猫 ( おねこ )でございますよ」「教師と云うのは、あの毎朝無作法な声を出す人かえ」「ええ顔を洗うたんびに 鵝鳥 ( がちょう )が 絞 ( し )め殺されるような声を出す人でござんす」 鵝鳥が絞め殺されるような声はうまい形容である。 吾輩の主人は毎朝風呂場で 含嗽 ( うがい )をやる時、 楊枝 ( ようじ )で 咽喉 ( のど )をつっ突いて妙な声を無遠慮に出す癖がある。 機嫌の悪い時はやけにがあがあやる、機嫌の好い時は元気づいてなおがあがあやる。 つまり機嫌のいい時も悪い時も休みなく勢よくがあがあやる。 細君の話しではここへ引越す前まではこんな癖はなかったそうだが、ある時ふとやり出してから 今日 ( きょう )まで一日もやめた事がないという。 ちょっと厄介な癖であるが、なぜこんな事を根気よく続けているのか吾等猫などには 到底 ( とうてい )想像もつかん。 それもまず善いとして「薄ぎたない猫」とは随分酷評をやるものだとなお耳を立ててあとを聞く。 「あんな声を出して何の 呪 ( まじな )いになるか知らん。 御維新前 ( ごいっしんまえ )は 中間 ( ちゅうげん )でも 草履 ( ぞうり )取りでも相応の作法は心得たもので、屋敷町などで、あんな顔の洗い方をするものは一人もおらなかったよ」「そうでございましょうともねえ」 下女は 無暗 ( むやみ )に感服しては、無暗に ねえを使用する。 「あんな主人を持っている猫だから、どうせ 野良猫 ( のらねこ )さ、今度来たら少し 叩 ( たた )いておやり」「叩いてやりますとも、三毛の病気になったのも全くあいつの御蔭に相違ございませんもの、きっと 讐 ( かたき )をとってやります」 飛んだ 冤罪 ( えんざい )を 蒙 ( こうむ )ったものだ。 こいつは 滅多 ( めった )に 近 ( ち )か 寄 ( よ )れないと三毛子にはとうとう逢わずに帰った。 帰って見ると主人は書斎の 中 ( うち )で何か 沈吟 ( ちんぎん )の 体 ( てい )で筆を 執 ( と )っている。 二絃琴 ( にげんきん )の御師匠さんの 所 ( とこ )で聞いた評判を話したら、さぞ 怒 ( おこ )るだろうが、知らぬが仏とやらで、うんうん云いながら神聖な詩人になりすましている。 ところへ当分多忙で行かれないと云って、わざわざ年始状をよこした迷亭君が 飄然 ( ひょうぜん )とやって来る。 「何か新体詩でも作っているのかね。 面白いのが出来たら見せたまえ」と云う。 「うん、ちょっとうまい文章だと思ったから今翻訳して見ようと思ってね」と主人は重たそうに口を開く。 「文章? 誰 ( だ )れの文章だい」「誰れのか分らんよ」「無名氏か、無名氏の作にも随分善いのがあるからなかなか馬鹿に出来ない。 全体どこにあったのか」と問う。 「第二読本」と主人は落ちつきはらって答える。 「第二読本? 第二読本がどうしたんだ」「僕の翻訳している名文と云うのは第二読本の 中 ( うち )にあると云う事さ」「 冗談 ( じょうだん )じゃない。 孔雀の舌の 讐 ( かたき )を 際 ( きわ )どいところで討とうと云う寸法なんだろう」「僕は君のような 法螺吹 ( ほらふ )きとは違うさ」と 口髯 ( くちひげ )を 捻 ( ひね )る。 泰然たるものだ。 「 昔 ( むか )しある人が山陽に、先生近頃名文はござらぬかといったら、山陽が 馬子 ( まご )の書いた借金の催促状を示して近来の名文はまずこれでしょうと云ったという話があるから、君の審美眼も存外たしかかも知れん。 どれ読んで見給え、僕が批評してやるから」と迷亭先生は審美眼の 本家 ( ほんけ )のような事を云う。 主人は禅坊主が 大燈国師 ( だいとうこくし )の 遺誡 ( ゆいかい )を読むような声を出して読み始める。 「 巨人 ( きょじん )、 引力 ( いんりょく )」「何だいその巨人引力と云うのは」「巨人引力と云う題さ」「妙な題だな、僕には意味がわからんね」「引力と云う名を持っている巨人というつもりさ」「少し無理な つもりだが表題だからまず負けておくとしよう。 それから 早々 ( そうそう )本文を読むさ、君は声が善いからなかなか面白い」「 雑 ( ま )ぜかえしてはいかんよ」と 予 ( あらか )じめ念を押してまた読み始める。 ケートは窓から 外面 ( そと )を 眺 ( なが )める。 小児 ( しょうに )が 球 ( たま )を投げて遊んでいる。 彼等は高く球を空中に 擲 ( なげう )つ。 球は上へ上へとのぼる。 しばらくすると落ちて来る。 彼等はまた球を高く擲つ。 再び三度。 擲つたびに球は落ちてくる。 なぜ落ちるのか、なぜ上へ上へとのみのぼらぬかとケートが聞く。 「巨人が地中に住む故に」と母が答える。 「彼は巨人引力である。 彼は強い。 彼は万物を 己 ( おの )れの方へと引く。 彼は家屋を地上に引く。 引かねば飛んでしまう。 小児も飛んでしまう。 葉が落ちるのを見たろう。 あれは巨人引力が呼ぶのである。 本を落す事があろう。 巨人引力が来いというからである。 球が空にあがる。 巨人引力は呼ぶ。 呼ぶと落ちてくる」 「それぎりかい」「むむ、 甘 ( うま )いじゃないか」「いやこれは恐れ入った。 飛んだところで トチメンボーの御返礼に 預 ( あずか )った」「御返礼でもなんでもないさ、実際うまいから訳して見たのさ、君はそう思わんかね」と金縁の眼鏡の奥を見る。 「どうも驚ろいたね。 君にしてこの 伎倆 ( ぎりょう )あらんとは、全く 此度 ( こんど )という 今度 ( こんど )は 担 ( かつ )がれたよ、降参降参」と一人で承知して一人で 喋舌 ( しゃべ )る。 主人には 一向 ( いっこう )通じない。 「何も君を降参させる考えはないさ。 ただ面白い文章だと思ったから訳して見たばかりさ」「いや実に面白い。 そう来なくっちゃ本ものでない。 凄 ( すご )いものだ。 恐縮だ」「そんなに恐縮するには及ばん。 僕も近頃は水彩画をやめたから、その代りに文章でもやろうと思ってね」「どうして 遠近 ( えんきん ) 無差別 ( むさべつ ) 黒白 ( こくびゃく ) 平等 ( びょうどう )の水彩画の比じゃない。 感服の至りだよ」「そうほめてくれると僕も乗り気になる」と主人はあくまでも 疳違 ( かんちが )いをしている。 ところへ 寒月 ( かんげつ )君が先日は失礼しましたと 這入 ( はい )って来る。 「いや失敬。 今大変な名文を拝聴して トチメンボーの亡魂を 退治 ( たいじ )られたところで」と迷亭先生は訳のわからぬ事をほのめかす。 「はあ、そうですか」とこれも訳の分らぬ挨拶をする。 主人だけは 左 ( さ )のみ浮かれた 気色 ( けしき )もない。 「先日は君の紹介で 越智東風 ( おちとうふう )と云う人が来たよ」「ああ 上 ( あが )りましたか、あの 越智東風 ( おちこち )と云う男は至って正直な男ですが少し変っているところがあるので、あるいは御迷惑かと思いましたが、是非紹介してくれというものですから……」「別に迷惑の事もないがね……」「こちらへ 上 ( あが )っても自分の姓名のことについて何か弁じて行きゃしませんか」「いいえ、そんな話もなかったようだ」「そうですか、どこへ行っても初対面の人には自分の名前の 講釈 ( こうしゃく )をするのが癖でしてね」「どんな講釈をするんだい」と事あれかしと待ち構えた迷亭君は口を入れる。 「あの 東風 ( こち )と云うのを 音 ( おん )で読まれると大変気にするので」「はてね」と迷亭先生は 金唐皮 ( きんからかわ )の 煙草入 ( たばこいれ )から煙草をつまみ出す。 「 私 ( わたく )しの名は 越智東風 ( おちとうふう )ではありません、 越智 ( おち ) こちですと必ず断りますよ」「妙だね」と 雲井 ( くもい )を腹の底まで 呑 ( の )み込む。 「それが全く文学熱から来たので、こちと読むと 遠近と云う 成語 ( せいご )になる、のみならずその姓名が 韻 ( いん )を踏んでいると云うのが得意なんです。 それだから 東風 ( こち )を 音 ( おん )で読むと僕がせっかくの苦心を人が買ってくれないといって不平を云うのです」「こりゃなるほど変ってる」と迷亭先生は図に乗って腹の底から雲井を鼻の 孔 ( あな )まで吐き返す。 途中で煙が 戸迷 ( とまど )いをして 咽喉 ( のど )の出口へ引きかかる。 先生は 煙管 ( きせる )を握ってごほんごほんと 咽 ( むせ )び返る。 「先日来た時は朗読会で船頭になって女学生に笑われたといっていたよ」と主人は笑いながら云う。 「うむそれそれ」と迷亭先生が 煙管 ( きせる )で 膝頭 ( ひざがしら )を 叩 ( たた )く。 吾輩は 険呑 ( けんのん )になったから少し 傍 ( そば )を離れる。 「その朗読会さ。 せんだって トチメンボーを御馳走した時にね。 その話しが出たよ。 何でも第二回には知名の文士を招待して大会をやるつもりだから、先生にも是非御臨席を願いたいって。 それから僕が今度も近松の世話物をやるつもりかいと聞くと、いえこの次はずっと新しい者を 撰 ( えら )んで 金色夜叉 ( こんじきやしゃ )にしましたと云うから、君にゃ何の役が当ってるかと聞いたら私は 御宮 ( おみや )ですといったのさ。 東風 ( とうふう )の御宮は面白かろう。 僕は是非出席して 喝采 ( かっさい )しようと思ってるよ」「面白いでしょう」と寒月君が妙な笑い方をする。 「しかしあの男はどこまでも誠実で軽薄なところがないから好い。 迷亭などとは大違いだ」と主人はアンドレア・デル・サルトと 孔雀 ( くじゃく )の舌と トチメンボーの 復讐 ( かたき )を一度にとる。 迷亭君は気にも留めない様子で「どうせ僕などは 行徳 ( ぎょうとく )の 俎 ( まないた )と云う格だからなあ」と笑う。 「まずそんなところだろう」と主人が云う。 実は行徳の俎と云う語を主人は 解 ( かい )さないのであるが、さすが永年教師をして 胡魔化 ( ごまか )しつけているものだから、こんな時には教場の経験を社交上にも応用するのである。 「行徳の俎というのは何の事ですか」と寒月が 真率 ( しんそつ )に聞く。 主人は床の方を見て「あの水仙は暮に僕が風呂の帰りがけに買って来て 挿 ( さ )したのだが、よく持つじゃないか」と行徳の俎を無理にねじ伏せる。 「暮といえば、去年の暮に僕は実に不思議な経験をしたよ」と迷亭が 煙管 ( きせる )を 大神楽 ( だいかぐら )のごとく指の 尖 ( さき )で廻わす。 「どんな経験か、聞かし 玉 ( たま )え」と主人は行徳の俎を遠く 後 ( うしろ )に見捨てた気で、ほっと息をつく。 迷亭先生の不思議な経験というのを聞くと 左 ( さ )のごとくである。 「たしか暮の二十七日と記憶しているがね。 例の 東風 ( とうふう )から参堂の上是非文芸上の御高話を伺いたいから御在宿を願うと云う 先 ( さ )き 触 ( ぶ )れがあったので、朝から心待ちに待っていると先生なかなか来ないやね。 昼飯を食ってストーブの前でバリー・ペーンの 滑稽物 ( こっけいもの )を読んでいるところへ静岡の母から手紙が来たから見ると、年寄だけにいつまでも僕を小供のように思ってね。 寒中は夜間外出をするなとか、冷水浴もいいがストーブを 焚 ( た )いて 室 ( へや )を 煖 ( あたた )かにしてやらないと 風邪 ( かぜ )を引くとかいろいろの注意があるのさ。 なるほど親はありがたいものだ、他人ではとてもこうはいかないと、 呑気 ( のんき )な僕もその時だけは 大 ( おおい )に感動した。 それにつけても、こんなにのらくらしていては 勿体 ( もったい )ない。 何か大著述でもして家名を揚げなくてはならん。 母の生きているうちに天下をして明治の文壇に迷亭先生あるを知らしめたいと云う気になった。 それからなお読んで行くと御前なんぞは実に仕合せ者だ。 露西亜 ( ロシア )と戦争が始まって若い人達は大変な 辛苦 ( しんく )をして 御国 ( みくに )のために働らいているのに 節季師走 ( せっきしわす )でもお正月のように気楽に遊んでいると書いてある。 その名前を一々読んだ時には何だか世の中が 味気 ( あじき )なくなって人間もつまらないと云う気が起ったよ。 一番 仕舞 ( しまい )にね。 私 ( わた )しも取る年に候えば 初春 ( はつはる )の 御雑煮 ( おぞうに )を祝い候も今度限りかと……何だか心細い事が書いてあるんで、なおのこと気がくさくさしてしまって早く 東風 ( とうふう )が来れば好いと思ったが、先生どうしても来ない。 そのうちとうとう晩飯になったから、母へ返事でも書こうと思ってちょいと十二三行かいた。 母の手紙は六尺以上もあるのだが僕にはとてもそんな芸は出来んから、いつでも十行内外で御免 蒙 ( こうむ )る事に 極 ( き )めてあるのさ。 すると一日動かずにおったものだから、胃の具合が妙で苦しい。 東風が来たら待たせておけと云う気になって、郵便を入れながら散歩に出掛けたと思い給え。 いつになく富士見町の方へは足が向かないで 土手 ( どて ) 三番町 ( さんばんちょう )の方へ我れ知らず出てしまった。 ちょうどその晩は少し曇って、から風が 御濠 ( おほり )の 向 ( むこ )うから吹き付ける、非常に寒い。 神楽坂 ( かぐらざか )の方から汽車がヒューと鳴って土手下を通り過ぎる。 大変 淋 ( さみ )しい感じがする。 暮、戦死、老衰、無常迅速などと云う奴が頭の中をぐるぐる 馳 ( か )け 廻 ( めぐ )る。 よく人が首を 縊 ( くく )ると云うがこんな時にふと誘われて死ぬ気になるのじゃないかと思い出す。 ちょいと首を上げて土手の上を見ると、いつの 間 ( ま )にか例の松の 真下 ( ました )に来ているのさ」 「例の松た、何だい」と主人が 断句 ( だんく )を投げ入れる。 「 首懸 ( くびかけ )の松さ」と迷亭は 領 ( えり )を縮める。 「首懸の松は 鴻 ( こう )の 台 ( だい )でしょう」寒月が 波紋 ( はもん )をひろげる。 「 鴻 ( こう )の 台 ( だい )のは 鐘懸 ( かねかけ )の松で、土手三番町のは 首懸 ( くびかけ )の松さ。 なぜこう云う名が付いたかと云うと、 昔 ( むか )しからの言い伝えで誰でもこの松の下へ来ると首が 縊 ( くく )りたくなる。 土手の上に松は何十本となくあるが、そら 首縊 ( くびくく )りだと来て見ると必ずこの松へぶら下がっている。 年に二三 返 ( べん )はきっとぶら下がっている。 どうしても 他 ( ほか )の松では死ぬ気にならん。 見ると、うまい具合に枝が往来の方へ横に出ている。 ああ好い枝振りだ。 あのままにしておくのは惜しいものだ。 どうかしてあすこの所へ人間を下げて見たい、誰か来ないかしらと、 四辺 ( あたり )を見渡すと 生憎 ( あいにく )誰も来ない。 仕方がない、自分で下がろうか知らん。 いやいや自分が下がっては命がない、 危 ( あぶ )ないからよそう。 しかし昔の 希臘人 ( ギリシャじん )は宴会の席で 首縊 ( くびくく )りの真似をして余興を添えたと云う話しがある。 一人が台の上へ登って縄の結び目へ首を入れる途端に 他 ( ほか )のものが台を蹴返す。 首を入れた当人は台を引かれると同時に縄をゆるめて飛び下りるという 趣向 ( しゅこう )である。 果してそれが事実なら別段恐るるにも及ばん、僕も一つ試みようと枝へ手を懸けて見ると好い具合に 撓 ( しわ )る。 撓り 按排 ( あんばい )が実に美的である。 首がかかってふわふわするところを想像して見ると嬉しくてたまらん。 是非やる事にしようと思ったが、もし 東風 ( とうふう )が来て待っていると気の毒だと考え出した。 それではまず 東風 ( とうふう )に 逢 ( あ )って約束通り話しをして、それから出直そうと云う気になってついにうちへ帰ったのさ」 「それで 市 ( いち )が栄えたのかい」と主人が聞く。 「面白いですな」と寒月がにやにやしながら云う。 「うちへ帰って見ると東風は来ていない。 しかし 今日 ( こんにち )は 無拠処 ( よんどころなき ) 差支 ( さしつか )えがあって出られぬ、いずれ 永日 ( えいじつ ) 御面晤 ( ごめんご )を期すという 端書 ( はがき )があったので、やっと安心して、これなら心置きなく首が 縊 ( くく )れる嬉しいと思った。 で早速下駄を引き懸けて、急ぎ足で元の所へ引き返して見る……」と云って主人と寒月の顔を見てすましている。 「見るとどうしたんだい」と主人は少し 焦 ( じ )れる。 「いよいよ佳境に入りますね」と寒月は羽織の 紐 ( ひも )をひねくる。 「見ると、もう誰か来て先へぶら下がっている。 たった一足違いでねえ君、残念な事をしたよ。 考えると何でもその時は 死神 ( しにがみ )に取り着かれたんだね。 ゼームスなどに云わせると副意識下の 幽冥界 ( ゆうめいかい )と僕が存在している現実界が一種の因果法によって互に 感応 ( かんのう )したんだろう。 実に不思議な事があるものじゃないか」迷亭はすまし返っている。 主人はまたやられたと思いながら何も云わずに 空也餅 ( くうやもち )を 頬張 ( ほおば )って口をもごもご云わしている。 寒月は火鉢の灰を丁寧に 掻 ( か )き 馴 ( な )らして、 俯向 ( うつむ )いてにやにや笑っていたが、やがて口を開く。 極めて静かな調子である。 「なるほど伺って見ると不思議な事でちょっと有りそうにも思われませんが、私などは自分でやはり似たような経験をつい近頃したものですから、少しも疑がう気になりません」 「おや君も首を 縊 ( くく )りたくなったのかい」 「いえ私のは首じゃないんで。 これもちょうど明ければ昨年の暮の事でしかも先生と同日同刻くらいに起った出来事ですからなおさら不思議に思われます」 「こりゃ面白い」と迷亭も空也餅を頬張る。

次の

#5 そして僕は途方に暮れる〈5〉

我が輩はポンである

Contents• カジポンのプロフィール 名前 : カジポン・マルコ・残月 生年月日: 1967年11月24日 年齢 : 53歳 出身 : 大阪 職業 : 文芸研究家・墓マイラー 「」というサイトを運営しています。 カジポン・マルコ・残月の本名と由来は? カジポン・マルコ・残月という名前はもちろん本名ではないのですが、カジポンはどうやら 本名の 梶本からとったそうです。 そして、マルコは母を訪ねて三千里の主人公の名前からきています。 残月の由来は芸術家を太陽としたとき文学家は月にあたるので、そこから残月と名付けたそうです。 残月とは、昼間の月のことです。 カジポンは月は夜道を照らして人の役に立っているけど自分はそこまで人の役に立っていないということで残月にしたそうです。 カジポンは墓マイラーで偉人愛がすごい! カジポンは文芸研究家として活動するとともに、 墓マイラーの第一人者でもあります。 それは現在まで続いており、およそ33年ものあいだ世界中にある偉人の墓参りをしています。 ゴッホ、ベートーベン、チャップリン、手塚治虫、ドストエフスキーなど全101カ国 2520人もの偉人たちのお墓参りをしてきたそうです! そして、そういう人のことをカジポンは 墓マイラーと呼び始めたそうですよ! そして、カジポンは元祖墓マイラーです。 カジポンが墓マイラーになったきっかけは、10代の時に文芸の魅力を教えてくれ、また自分に感動を与えてくれた偉人達に感謝を伝えたいという想いから、19歳の時から世界各国にある偉人のお墓まで赴いてお墓参りをしてきたそうです。 偉人愛があふれ出ていますね。 カジポンにとって 偉人たちは恩人のような存在なんだそうです。 初めての偉人の墓参りはロシア文学の ドストエフスキー! カジポンにとってロシア文学の ドストエフスキーは第2の育ての親のような存在だったらしく、お礼が言いたいと思いドストエフスキーのお墓に行くためにソ連まで行きアレクサンドルネフスキー大修道まで行ったのが初めての偉人のお墓参りでした。 そこで、ドストエフスキーのお墓を見て実際に触れた瞬間に本当に存在していたんだととても感動したんだそうです。 そこから、カジポンの墓マイラーとして偉人たちのお墓に行くという人生が始まりました。 カジポンは結婚して息子もいる?子育てブログがすごい! カジポンは35歳の時に 康子 やすこさんとういう方と結婚されており、現在10歳になる息子の 風 ふうくんもいます! 風君の子育てブログもあります。 ななんと、風くんが生まれた2009年10月からずっと続いているのです!! すごすぎませんか?!生まれてから今までの成長記録がブログでみれるので風くんが大きくなった時に今までの自分を振り返ることができますね。 素晴らしいです! そして、家族ができてからは家族全員でお墓参りに行っているという仲良し家族です。 引用元: 家族全員墓マイラーですね! 墓マイラー・カジポンの世界中での墓参り写真! 墓マイラーカジポンの活動を少し覗いてみましょう! kajipon1967 がシェアした投稿 - 2019年 1月月30日午前12時27分PST いろんなお墓がありましたね!私は、日本のお墓と海外ドラマで見るお墓しか知らなかったので偉人たちのお墓を見てけっこう衝撃を受けています。 特に、ロミオとジュリエットのモデルとなった人たちのお墓は手を繋いでいてとっても素敵ですね。 あとは、夏目漱石と猫のコラボレーションには感動しましたね。 そして、フレディ・マーキュリーの銅像と一緒のポーズをとる息子さん可愛いですね! 墓マイラーとして、世界各国を旅するカジポン一家。 とてもすてきだなと思います! カジポンはジョジョ大好きで実はジョジョ立ちの生みの親? 引用元: 墓マイラーの生みの親として活動しているカジポンですが、実はあることの生みの親でもあります。 それは、、、 ジョジョ立ちです!! ジョジョを読んだことのない私でも知っているこの言葉。 人間には不可能だと言われているジョジョのポーズをすることですね。 実は、カジポンは大のジョジョファンということで昔プライベートの仲間内でジョジョ立ちを練習しており、それを自身のに乗せていたところ話題になり有名サイトなどで紹介され、ついにはジョジョの作者・荒木さんにもお会いすることができたそうです。 しょこたんとのジョジョ立ちポーズもありましたよ! 墓マイラーの生みの親というでけでもすごいのに、まさかジョジョ立ちの生みの親でもあったとは、、、カジポンはすごいお方ですね!! 以上、最後までお読みいただきありがとうございました!.

次の

我が輩は猫である : 三郎の日記

我が輩はポンである

「ケロロ 再び大地に立つ であります」ケロロ小隊の面々が去り、日向家はしばしの休息が訪れていたが、再びアイツが帰ってきた!「タママ 黒いタママ であります」日向家を制圧するかに見えたケロロだが、結局いつも通りこき使われるはめになる。 だが、タママ二等兵が第二の作戦を進行していた。 「ケロロ お宝侵略大作戦 であります」TVで巨石建築物を見たケロロは、古代の宇宙人が地球侵略の為に作ったと思い、調査に出かける。 「アンゴル・モア 花見でモアモア? であります」地球人がお花見でストレスを発散し、驚異的な経済成長を遂げる原動力にしていると分析したケロロは…。 「冬樹 名探偵は僕? であります」冬樹は探し物が得意だと聞いたケロロは、探偵になり一儲けしようと、宇宙探偵の556を助手にするため部屋を訪ねる。 ところが556は密室で倒れていた!「ドロロ 復活の戦士 であります」秋の実家の田植えを手伝いに来たケロロたちは、鬼の噂を聞き…。 「ギロロ よみがえったソルジャー であります」地球侵略を始めたギロロは、すぐに育つ植物を使って日本中をジャングルにしようとして…。 「冬樹 およげこいのぼり! であります」おばあちゃんから冬樹にこいのぼりと鎧飾りが届く。 ケロロは早速飾ろうとするが、冬樹は年齢を理由に嫌がり…。 「夏美&小雪 テニスのプリンセス であります」小雪から決闘を言い渡された夏美。 テニスで決着をつけることになり、夏美はケロロの特訓を受けるが…。 「ケロロ 侵略日和のさつき晴れ であります」日向家にツバメが巣を作った。 みんなに大事にされるツバメに嫉妬したケロロは…。 「ドロロ 逆襲するは我にあり であります」バイパーの兄は弟の復讐をするため、様々なワナでケロロ小隊を捕らえていく。 残されたドロロは…。 「巨大カエル対南海の大怪獣 であります」バイパーとの戦いで巨大化したケロロは、元に戻るまで西澤家の別荘のある島にいることになり…。 「ケロロ 自販機で侵略せよ であります」ケロロはそこら中にある自販機に目をつけ、色々なジュースを自販機で売り始めるのだが…。 「タママ 覚醒!新必殺技 であります」タママはポールに戦いを挑むが、必殺技をあっさりかわされ、負けてしまう。 そこで、タママは新しい必殺技を開発するが…。 「ケロロ 育てよ城! であります」ケロロは、クルルが作った道具ナノラを使って、自分で作ったお城のプラモデルを兵器として育てたのだが…。 「ケロロ の、動く城! であります」お城に逃げられたケロロ軍曹は、移動するお城を捕捉する。 だが、その進路にはガンプラ工場があって…。 「ケロロ ケロケロマシン猛レース であります」クルルの発明品で小さくなった夏美は、ケロロ軍曹が作ったレース場で勝負を挑まれるのだが…。 「モア 眠り姫てゆーか安眠希望? であります」忙しいケロロにかまってもらえないモアは居眠りをしてしまう。 時々寝ぼけて起きるモアだが…。 「冬樹 謎の転校少女にナニが起こったか? であります」冬樹のクラスにオカルト好きの転校生、木下黎がやってきた。 彼女は冬樹と意気投合するが…。 「夏美&サブロー 戻れないフ・タ・リ であります」実体化ペンの修理で日向家を訪れたサブロー。 修理中、基地内部を夏美と見学していたのだが…。 「桃華&夏美&モア 怪盗モアピーチサマー であります」冬樹は桃華の父に、新たにオープンする西澤美術館に飾る予定の絵が狙われているので守って欲しいと依頼を受けるが…。 「ケロロ 必勝!水中大決戦 であります」学校から帰ってきた冬樹と夏美は、家の中が水で一杯になっているのに驚き…。 「ケロロ 教師ゲロゲロ物語! であります」軍へのレポート提出を忘れたケロロは、手早く調査するため教師として学校に現れるが…。 「ケロロ 再会、父よ であります」ケロロの父がケロロにお見合い話を持ってきた。 ケロロは結婚に関するあるしきたりを嫌がり、断ろうとするが…。 「ケロロ 吸うなら吸え! ウソやっぱやめて であります」長雨で湿度が上がり絶好調のケロロは、水分を吸い取るニョロロで洗濯物を乾かすが…。 「ドロロ トラウマからの脱出 であります」トラウマスイッチが入ったドロロは症状が悪化していた。 原因を探ろうとするケロロたちは…。 「ケロロ ペコポンにほえろ! であります」偶然宇宙警察の無線を傍受したケロロたちは、凶悪犯がペコポンに向かっていると知って…。 「タママ ケロン星からの訪問者 であります」突然空から宇宙船が落下してきた。 中からは、小隊への配属命令を受けたというケロン人・カララが現れる。 「ギロロ 愛の救出大作戦 であります」夏美と冬樹は、突然現れたイベント星人に拘束されてしまう。 ギロロたちは夏美たちを救出しようとするが…。 「夏美&小雪 ドッキドッキ初デート であります」ギロロは夏美からデートに行くと聞き夏美の後を付けるが、デートの相手は小雪で…。 「冬樹&桃華 ひみつのミステリーデート であります」廃校で怪奇現象が起こるという噂を聞いた冬樹と桃華。 調査をすべくその学校に向かうが…。 「ケロロ なあ、ゲームを作ろうじゃないか であります」テレビゲームに夢中の夏美を見たケロロは、自分たちでゲームを作り予算を増やそうとするが…。 「ケロロ 大改造!リフォームは劇的に であります」家のリフォーム番組を見た夏美と冬樹は、秋に家のリフォームをお願いするが却下されてしまう。 「ドロロ いざまいる!宿命の対決 であります」利口な犬が町にやってきた。 その犬に興味をもったケロロは、犬を捕まえようと企むが…。 「夏美と冬樹 の神隠し であります」車で家に帰ろうとしていた日向家の三人は、道に迷い、ケロロ達が経営する宇宙人専門の健康ランドにたどり着く。 「ケロロ 恒例!真夏のお笑いバトル であります」ある日、ケロロ宛に手紙が届く。 それは以前出場した『水着漫才コンテスト』の案内で…。 「ケロン人VSペコポン人ついに全面対決か!? であります」超リアル侵略体感ステージで訓練をするケロロたち。 だが、そこに思わぬ強敵が現れて…。 「小雪 ドッキドッキ初おむすび であります」ピクニックで夏美とお弁当交換をすると約束した小雪。 だが夏美のかわいいお弁当を見た小雪は…。 「極悪!迷惑!宇宙宿題忘れ王伝説 であります」ケロン軍本部から送られてきた侵略ノルマ提出指令書を見て、提出を忘れていたケロロ軍曹は慌てていた。 期限に遅れた場合、小隊は強制退去となるためケロロは色々な策を考えるのだが…。 「ケロロ 鉄人シェフの挑戦状 であります」宇宙一の料理名人、ミネミネとゴモゴモ。 彼らは宇宙いきなり団子選手権優勝者のケロロの噂を聞きつけ…。 「タママ 最強戦士の挑戦状ですぅ であります」何故か日向家に眼光するどいヘラクレスカブトがやってくる。 彼の目的はタママと戦うことで…。 「冬樹 198X僕たちの夏休み であります」ケロロ小隊と冬樹は、人生が二度あれば銃に落雷が落ちたショックで、昭和の時代へとタイムスリップしてしまう。 ケロロと冬樹は昭和の時代の町へ見物に出かけるのだが…。 「あっと驚く? 特別企画 ゲロゲロ30分 であります」夏休みも終わり相変わらずガンプラ作りにいそしむケロロだが、今回のケロロ軍曹は特別バージョン! 30分間にショートストーリーをどんどん発表! さてケロロ軍曹の活躍はいかに…。 「桃華 覚醒!三番目の桃華 であります」桃華の父、梅雄は冬樹が愛娘の婿にふさわしいかどうかテストすることになる。 是が非でもテストをクリアさせたい桃華は、ケロロ小隊の面々に協力をお願いするのだが…。 「ケロロ小隊 私を月へ連れてって であります」ケロロが月にリゾート開発をして、ひともうけを企んでいるのを察知した夏美と冬樹はケロロを問いつめる。 だがケロロは小隊の慰安旅行だと言ってごまかそうとするのだが…。 「タママ 結婚するって本当ですか であります」タママのところにタルルとカララが現れる。 カララはタママのお嫁さんになるために来たと言うが…。 「タママ 封印のタママインパクト であります」タママはカララ父の宇宙船にタママインパクトが効かなかったため、飛び道具技を封印するのだが…。 「ケロロ 宝さがしはやっぱ宝島だよね であります」突然宇宙刑事のポヨンが現れケロロを逮捕しようと日向家にやってくる。 どうやらケロロ軍曹が宇宙アイドルのすももになりすまして指輪を盗んだというのだが、その指輪には秘密が…。 「冬樹 運動会はあきらめない であります」冬樹は運動会のリレーの選手になってしまい、特訓を始めるが…。 「ギロロ 猫は知っている であります」ギロロは猫に呼びかけられて驚いた拍子に大切な夏美の写真を手放し、無くしてしまう。 猫は責任を感じて、写真の代わりを探そうとするのだが…。 「ケロロ いや? 家出ってホント寂しいもんですね であります」いつものように夏美とケロロはケンカを始める。 エキサイトしたケロロは、日向家から秘密基地を移動する決意をするのだが…。 「ギロロ 真っ赤なド根性の日々 であります」実験の失敗で、ギロロは夏美の右腕にくっついてしまう。 大事な試合がある夏美は、ギロロをつけたまま学校に行くが…。 「戦え小雪! 大切な人を守るために であります」修行中の小雪は、突然何者かの攻撃を受ける。 それは宇宙忍者・機動幻惑種族の仕業で…。 「623 僕のラジオにでない? であります」623のラジオ番組で、一日アシスタントのオーディションがあると知った夏美は…。 「ケロロ 温泉混浴露天風呂殺人事件 湯煙にさすらう宇宙一不幸な兄妹の魂 兄が作ったカラーボックス温泉 いざ入ろうとすれば片足しか入んなくて、ショックで足を滑らせた兄が気絶するとき、湯の花に妹の涙が舞い落ちる であります」「クルル とことん嫌なヤツ であります」• 「桃華 ちょっと宇宙でランチでも であります」冬樹にお弁当を食べてもらいたい桃華は、冬樹が彗星を見たがっているのを聞き、自家用スペースシャトルで宇宙に誘い…。 「ケロロ 松茸を狩れ! であります」松茸が高価だと知ったケロロは、松茸を売って活動資金にしようと松茸狩り作戦を決行するのだが…。 「ケロロ ガシャッとまわせばいれかわり であります」クルルの発明で、夏美はケロロと姿を入れ替えられてしまう。 だが入れ替わった二人は様々な出来事に巻込まれ…。 「夏美 魔法少女になれたら… であります」ケロロが宇宙廃品回収に出した不要品から、冬樹たちはおもちゃの魔法のステッキを見つけて…。 冬樹たちは家からの脱出を試みるが…。 「ケロロ なれ!スーパーヒーローに であります」イベンタ星人から全宇宙向けの新番組の制作を頼まれたケロロは、さっそく番組を作り始めるのだが…。 「ケロロ 祝え!ハッピーバースデイ であります」誕生日が近くなったケロロは、皆に祝ってもらおうと、さりげなくアピールするのだが…。 「モア 不思議の国のモア であります」モアはケロロに頼まれてガンプラを買いに街に出掛ける。 だが、そこで出会った黒いウサギにガンプラを持っていかれてしまい…。 「ギロロ 七つの顔の男だぜ であります」 クルルの発明のせいで、ギロロは七人の性格のギロロに分裂してしまう。 なんとか元に戻ろうとするギロロだが…。 「冬樹 盛り上がれ!オカルト大会 であります」オカルトクラブの廃部の危機を救うため、桃華は冬樹とオカルト大会に出場して実績を作ろうとして…。 「ケロロ メリークリスマスが言えなくて であります」 クリスマスの日、ケロン軍本部から侵略経過を審査する調査団の派遣の連絡を受けたケロロ軍曹は色々な作戦を考えるのだが…。 「ケロロ 新年・新生ケロロ誕生 であります」新年の抱負も適当なケロロを見かねたギロロは、クルルの発明品でケロロを真面目にしようとするのだが…。 「小雪 おばあちゃんがやって来た であります」小雪を交えておせちを食べていた夏美たち。 そこへ突然、秋奈おばあちゃんがやって来て…。 「ケロロ小隊 大空から愛をこめて であります」凧が昔軍事的要素を持っていたと知ったケロロは、小隊員自らが凧になり、上空で侵略会議をしようと思い付くが…。 「桃華対モア 激突はねつきバトル であります」おみくじで「ラッキーアイテムははねつき」と出た桃華は、早速はねつき大会を開催するのだが…。 「夏美 侵入!秘密基地 であります」秘密基地の非常呼集訓練を実施。 ケロロは、623の色紙でおびき寄せた夏美を侵入者に仕立てるが…。 「日向秋 たぶん宇宙最強の女 であります」非常呼集の訓練時、外部からの不正アクセスにより、秋のパーソナルデータが盗まれた。 秋は謎の宇宙人にさらわれてしまい…。 「カララ&タルル ペコポンをもらっちゃおう! であります」日向家に突然、タママの後輩のタルルとカララが再びやって来た! カララはクルルに花嫁修業の成果を見てもらおうと訪ねたのだが…。 「夏美 ギロロ散る?決死の救出作戦 であります」ギロロは突然、謎の宇宙船連れ去られてしまった。 なんとか救出しようとするケロロたち。 だが、囚われたギロロが居る場所はケロン人の苦手な砂漠地帯だった! 頼りにならないケロロたちに代わり、夏美が救出に向かうのだが…。 「モアピーチサマースノー 決戦バレンタイン であります」夏美はサブローにチョコを渡すつもりが、そこを通りかかった556に渡してしまい…。 「ケロロ 世にも不幸な物語 であります」助けた宇宙人に落とし物の返却を頼まれるケロロ。 その落とし物「絶対不幸石」のせいで、ケロロは災難に見舞われて…。 一方、桃華も冬樹の写真を撮ろうとするのだが…。 「ケロロ&冬樹 ふたりで… であります」ケロロと冬樹が屋外でケロン星の遊びを始めると、いつの間にか冬樹のおばあちゃんの家近くまで来ていて…。 「桃華 駆け落ち大作戦 であります」親衛隊員の吉岡平と駆け落ちをしようとする桃華。 しかしそれは、冬樹にある一言を言わせるための作戦で…。 「ドロロ&小雪 出会いの記憶 であります」ケロロから友達だと思われているのかどうか悩んでいるドロロ。 その姿を見て、小雪は自分の幼い頃の暮らしを思い出して…。 「夏美 名犬ナッチー であります」テレビの子犬にうっとりする夏美。 ケロロより子犬の方がいいと言う夏美の言葉を聞いてしまったケロロは、あることを思いつくが…。 「ケロロ わんぱくケロッパー であります」冬樹から水族館がブームだと聞いたケロロは、自分たちで水族館を作って一儲けしようと企むのだが…。 「ケロロ え?我が輩…誰?みんな…誰? であります」上空から突然の電撃が日向家に直撃した。 その途端、ケロロ小隊の面々は記憶喪失に。 ケロロたちは、色々な試みをして記憶を思い出そうとするのだが…。 「ケロロ小隊 ペコポンが静止する日!? であります」突然、冬樹たちの周辺でコンピュータ等がハッキングされて使えなくなってしまう。 「ケロロ小隊 ペコポン!! 滅び行くか愛の星よ!! であります」ケロロ小隊に変わって、ペコポン侵略に現れたガルル小隊。 彼らは、ケロロ小隊の面々に襲いかかっていく。 次々と倒される仲間たちを見たケロロ軍曹は…。 「ケロロ小隊 まごころを君に であります」ガルル小隊に捕まり、改造されてケロロ大尉となってしまったケロロ。 だが、夏美と冬樹のおかげで自分を取り戻す。 壊滅寸前だったケロロ小隊を集合させ、ケロロ軍曹は最後の戦いを挑む。

次の